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日外会誌. 97(8): 606-610, 1996


特集

胆道拡張症と胆道閉鎖症-最近の治療の動向-

胆道拡張症における肝内結石症

1) 帝京大学 医学部第2外科
2) 群馬県立小児医療センター 
3) 東京大学 医学部小児外科

宇野 かおる1) , 土田 嘉昭2) , 河原崎 秀雄3)

I.内容要旨
これまでに肝内胆管の狭窄を伴う拡張が,肝内結石の原因となる可能性は推測されてきたが,実際の症例でその証明となる長期予後を確認した研究は無かった.我々は,43年以前からの症例を追跡調査し,初回手術で肝外拡張胆管切除およびRoux-en-Y再建による根治術を施行し,かつ術前あるいは術中に胆道造影上,肝内を含めた胆管の形態を確認し得た56症例に関して,肝内胆管の拡張形態別に,肝内胆管結石を含めた合併症の有無を検討した.予後追跡期間は4年~36年,平均14年6カ月であった.肝内胆管拡張を認めないグループI,29例中,その後肝内胆管結石を認めたのは,1例(3%)であった.肝内胆管拡張は認めるが下流に狭窄を伴わないグループII,24例中,肝内胆管結石が出現したのは,1例(4%)であった.肝内胆管拡張を認め,なおかつ下流に狭窄を伴っていた.グループIII,3例は全例その後に肝内胆管結石を合併した.その内1例はPTCDによる結石の縮小状態で,別の1例は2回の再手術後尚反復性胆管炎が認められる状態で,もう1例は左肝内胆管結石と反復性胆管炎による続発性肝左葉萎縮のため肝左葉切除を施行した状態で,現在も経過観察中である.下流に狭窄を認めるグループIII症例の術後肝内胆管結石合併率は100%で,なおかつ病悩期間は7年~24年におよび根治も難しい.この結果を踏まえ,手術時に修復不能な狭窄を伴う肝内胆管拡張で,かつ拡張が左葉に限局する場合は,肝切除を含めた再建術式が妥当であると考え既に報告してきた1).以上,長期予後調査の結果とそれに基つく治療方針に関して報告する.

キーワード
胆道拡張症, 肝内胆管結石, 反復性胆管炎, 肝切除

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