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日外会誌. 97(8): 594-598, 1996


特集

胆道拡張症と胆道閉鎖症-最近の治療の動向-

胆道拡張症における癌発生とその対策

香川医科大学 総合診療部・小児外科

戸谷 拓二 , 土岐 彰

I.内容要旨
いわゆる総胆管嚢胞はほぼ全例,膵・胆管合流異常を伴い,胆道癌が高率に発生する.本症は前癌状態として認識されるべき疾患であり,一般胆道癌の5~35倍に発癌がみられ,最近では30%を超す発癌率が報告されている.加齢とともに発癌率は高くなるとともに,一般胆道癌より平均数10年若く発生する.癌は肝外胆管と胆嚢に好発し,まれに肝内胆管や膵内胆管にも発癌する.胆管の嚢胞状拡張例では嚢胞癌が70%,胆嚢癌が30%にみられ,円筒状拡張例では胆嚢癌が90%以上となる.発癌のリスクは内瘻術施行例で高く,とくに嚢胞十二指腸吻合例の発癌例が多い.十分なinformed consentのもとに早期の予防的嚢胞切除が望まれる.進行癌では根治切除率を高めるために,最近は術前にTAE,PTPEなどが行われている.肝機能の回復をまって,HPD,HLPDなどの超根治手術が行われており,長期生存例も得られつつある.しかし進行癌での手術成績はなお芳しくなく,最良の治療は胆道拡張症の早期発見と予防的胆管切除を行うことにある.胆管切除は拡張胆管にとどまらず,膵内胆管を含めた肝外胆管の全切除が望ましく,胆道再建はできるだけ大きな吻合口が得られるよう留意する.

キーワード
総胆管囊胞, 胆管癌, 胆道拡張症, 膵・胆管合流異常, 胆囊癌

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