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日外会誌. 97(7): 551-556, 1996


特集

閉塞性動脈硬化症

大腿膝窩動脈領域の血行再建

旭川医科大学 第1外科

笹嶋 唯博

I.内容要旨
閉塞性動脈硬化症に対する大腿膝窩動脈バイパス(FPB)にっいて適応,膝上(FPAK)と膝下バイパス(FPBK)の相違,代用血管の選択,自家静脈グラフト(AVG)の調整法,Reversed vein bypass(RVB)とIn situ bypass(ISVB)によるFPB手技などについて最近の考え方や方法を述べた.
代用血管の選択では,FPAKは内径6mmのメリヤス編みDacronやEPTFE人工血管,FPBKはAVG,特に同側大伏在静脈(SV)が第一選択である.ストラテジーとして膝下部SVが細い場合(2.5mm)にはRVBよりもISVBがよい.大腿型閉塞でDiabeticatherosclerosisがある場合には,FPBは早晩,病変進行により機能を失う.糖尿病,若年ASO,喫煙,高脂血症などの間欠跛行例はできるだけ救肢のための末梢bypassにSVを温存し,初期は人工血管によるFPAKに止めるべきである.AVGは拡張性が良好ならば2.5mmまで使用できる.graft長が不足ならばveno-venous compositeとしてFPBKにはAVGの使用を徹底する.調整にはヘパリン生食よりもヘパリン化自家血が内皮細胞の再生速度で明らかに優れている.AVGは,移植後2時間で内面の80%で内皮細胞の脱落をみるが,3日目から再生が始まり7日目で80%が再内皮化される.移植後はRVG,ISVGとも中膜が温存されvasa vasorumの再疎通が観察されるが,RVGは5年以降中膜の線維化,菲薄化が発生する.ISVGの長期変化は不明である.AVGの閉塞原因は,移植1カ月までは手術手技の不適切とAVG不良,1カ月~2年は内膜肥厚によるgraft狭窄,1~5年は病変進行,5年以降はgraft硬化である.それぞれの時期で適切な修復術が必要であるが,2年以内に集中して発生するgraft狭窄に最も注意を払わねばならない.人工血管によるFPAK 5年累積開存率は,約70%,AVGによるFPBKは,RVBとISVBで開存率に差がみられず,一次,二次が68.9%,87.9%である.

キーワード
大腿膝窩動脈バイパス, ASO, 自家静脈グラフト, in situ vein bypass, reversed vein bypass


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