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日外会誌. 97(7): 545-550, 1996


特集

閉塞性動脈硬化症

大動脈腸骨動脈領域の血行再建

福岡県済生会福岡総合病院 外科

岡留 健一郎 , 福田 篤志

I.内容要旨
大動脈腸骨動脈の閉塞性動脈硬化症では,この領域のみの閉塞・狭窄がみられるものと,浅大腿動脈以下の末梢動脈にも病変のみられるものとがある.前者は比較的若年者で虚血症状の軽い症例が多く,後者はより高齢者で,心疾患をはじめとした合併症を有する虚血症状の強い症例が多い.
中等度以上の間歇性跛行や潰瘍・壊死の症例ではなるべく血行再建をおこなうのが望ましい.限局性の狭窄病変には経皮的血管形成術の適応となる症例もあるが,狭窄病変の多発する症例や完全閉塞例ではバイパス術が最良の血行再建法である.バイパスの術式選択にあたっては,全身状態の評価が必要であるが,心疾患の検索では通常の検査に加えて,ジピリダモール負荷心筋シンチや心エコー検査が有用である.全身状態が比較的良好で局所の硬化所見が軽度で後腹膜手術の既往がない症例には大動脈大腿動脈バイパス術や腸骨大腿動脈バイパス術などの解剖学的バイパス術が望ましく,これ以外の症例には非解剖学的バイパス術を考慮する.この場合,一側腸骨動脈病変のみの血流障害で反対側病変が軽度の場合は大腿大腿動脈交叉バイパス術が,両側腸骨動脈病変のみられる場合は腋窩大腿動脈バイパス術が選択される.
5年開存率は,解剖学的バイパス術で80~90%,非解剖学的バイパス術で45~80%と報告されている.我々は,術中再建したグラフトの末梢で,血流波形を測定しているが,II型波形を呈した症例は0または1型を呈した症例に比べて,遠隔開存率が低い傾向がみられた.
今後は,心疾患などの重篤な合併症を有する症例やそけい部以下の動脈閉塞を伴った重症虚血症状を呈する症例が増加するものと思われ,非解剖学的バイパス術や多領域の血行再建術をおこなう症例が増えるものと予想される.

キーワード
閉塞性動脈硬化症, 血行再建術, 非解剖学的バイパス術, 心リスク評価, 血流波形解析

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