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日外会誌. 97(7): 520-525, 1996


特集

閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症の治療
薬物療法を中心に

国立循環器病センター 内科心臓血管部門医長

松尾 汎

I.内容要旨
閉塞性動脈硬化症(ASO)は,「全身の動脈硬化の一部分症である」という認識の下で診療を行う.従って,本症の治療には,①動脈硬化性危険因子,②末梢循環障害及び③合併他臓器疾患に対するそれぞれの治療が「三本柱」で,各々に薬物療法が適応される.
①動脈硬化危険因子への対策
ASOでは,特に高脂血症や糖尿病に注意が必要である.先ず危険因子をチェックし,合併例では病態に応じた食事療法や運動療法(禁煙は勿論)に加えて,各々の薬物療法(脂質改善薬,血糖降下薬等)を開始する.
②虚血肢の治療
虚血症状,病変の部位や程度に加えて,患者さんの希望を参考にして方針を決定する.一般的処置(保温,鎮痛など)と内科的治療は多くの例で考慮されるべき治療で,内科治療には運動療法(体操や歩行等,但し重症例には禁忌)や薬物療法が用いられる.薬物は末梢血管拡張と血液レオロジーの改善,更に病変の進行防止を目的に使用されるが,現在は抗血小板薬が繁用されている.経口法と注射法があり,各々作用機序が異なる為,2~3剤を併用する時もある.しかし軽症例は1~2剤で軽快する事も多く,中に寒冷時のみの内服でよい例もある.
③合併する他臓器虚血の治療
ASOは全身の動脈硬化の一部分症であり,冠動脈狭窄等の合併(約40%)や脳血管障害の合併に注意する.これら重要な他臓器虚血を合併する例では,併せて臓器虚血の治療が必要となる.更にASO例の生命予後に大きく影響している虚血性心疾患や脳血管障害の予防や進展防止の目的にも薬物療法が有効とされている.ASOの治療を行う臨床医には,下肢虚血の症状の改善や病変修復のための知識や技術は勿論,「病変進行」の阻止,「心事故」,「脳事故」の予防等にも目を向けた「広い視野」が要請されている.

キーワード
閉塞性動脈硬化症, 動脈硬化性危険因子, 合併他臓器虚血, 抗血小板薬, 運動療法


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