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日外会誌. 97(7): 486-491, 1996


特集

閉塞性動脈硬化症

重症虚血肢

東京医科歯科大学 医学部第1外科

岩井 武尚

I.内容要旨
重症虚血肢とは回復力のなくなった虚血肢でそのまま観察していれば大切断が免れない状態である.かつてはそのままなにもせず切断された可能性が高い疾患群であるが,切断した場合の術後QOLの悪さや虚血のもたらす全身的悪循環を断ち切る観点から血行再建(血管内手術も含む)が行われるようになってきた.手技の改善・進歩により切断に至らず社会復帰できる症例も増加しているが「何時から重症か」,「どれが重症か」となるとわが国では厳密な定義がなされていない.欧米で用いられることになった新定義「2週間以上の安静時痛患者では足関節圧40mmHg以下,潰瘍または壊死を有する患者では60mmHg以下が重症虚血肢である.趾血圧はそれぞれ30と50mmHg以下が相当する」は当分わが国でも採用してもよいと思われる.一方病態生理からみると微小循環をモニターすることが大切で現在のところ経皮的酸素分圧測定が再現性・簡便性ともに優れている.10mmHg前後で酸素吸入に反応しない場合は緊急性を要する重症虚血肢と判断される.手術は自家血管を用いた下腿へのバイパスを成功させるか,大腿深動脈形成術を入念に行うことである.またPTA(経皮的血管形成術)を加えたり,厳重なフォローアップにより必要ならばrevision手術を行うこと,形成外科の協力を得ることによってより機能的なリム・サルベージを得ることが重要であろう.患者は全身的にハイリスクであり集学的治療を心がける必要がある.微小循環を改善させるような薬剤はその効果を確認のうえ使用すべきである.

キーワード
足趾壊疽, 安静時痛, 微小循環, 経皮酸素分圧, 重症虚血肢


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