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日外会誌. 97(7): 476-480, 1996


特集

閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症のリスクファクターと予後

東京医科歯科大学 医学部第2外科

伊藤 雅史 , 三島 好雄

I.内容要旨
閉塞性動脈硬化症(ASO)は全身性動脈硬化症の一部分症であり,生活様式の変化や高齢化に伴い,本邦においても急速な増加傾向を示している.ASOでは動脈硬化の発生・進展をもたらす危険因子の是正・治療は基礎治療として極めて重要であり,多くの疫学調査や追跡調査によって,高コレステロール血症,高血圧,喫煙は単独の因子として重要であることが確認されている.その他の因子として,糖尿病,肥満,低HDLコレステロール血症,高トリグリセライド血症などの脂質代謝異常,加齢・性などがあげられ,ASO患者では複数の危険因子を有することが多く,その集積が更に動脈硬化を増悪させる悪循環を形成する.動脈硬化と生命に関する自然経過は治療方針決定にあたって重要な因子となる.間欠性破行患者の自然経過について,虚血症状を指標とした従来のhistorical studyでは,重症虚血への増悪は比較的低率であるとされていたが,血行動態の客観的評価による研究では自然経過は必ずしも良好ではなく,特に重症肢行症例では重症虚血への進展が高率である.ASO症例の予後は非ASO患者に比して明らかに不良であり,その死亡原因は冠,脳,腎など重要臓器の動脈硬化による動脈血行障害が多い.ASOにおいては,下肢の循環障害のみにとらわれず,直接死因に結びつく臓器血管の併存病変の存在を常に念頭において,全身疾患として治療することが重要である.

キーワード
閉塞性動脈硬化症, リスクファクター, 自然史, 予後

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