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日外会誌. 97(6): 416-420, 1996


特集

食道癌外科治療の実際

食道癌手術の術中管理と処置
(1)輸液と輸血

東北大学 医学部第2外科

遠藤 義洋 , 西平 哲郎

I.内容要旨
食道癌手術では,縦隔,腸管,内臓血管床および開胸・開腹創などがthird spaceとなり,縦隔を重点的に郭清すると,そこへの移行(non-functional EGF非機能的細胞外液)の貯留が多く,水分・Naの貯留傾向が強くなる.また,胸腔,腹腔が広く開放されるため不感蒸発は多く,リンパ組織が豊富な縦隔などを操作するために組織液の流出も大量になる.
以前は輸血量を極力抑えNaを過剰に投与しない消極的輸液療法が行われていたが,以上の理由により,現在では細胞外液とよく以た組成をもつハルトマン液を十分量用いる積極的輸液療法が主流となり,8~10ml/kg/hrの投与が一般的となっている.
術中出血も多くなりやすい.10ml/kg程度の血液量の喪失は晶質液にて補充可能であるが,出血量の3~ 4倍程度の投与量がないと循環血液量に不足を生じるし,その大量投与が肺水腫・低酸素血症の遷延化を惹起する可能性もある.そのため代用血漿(デキストラン・HES・ゼラチンなど)が併用される.
輸血は,患者の年齢,癌の進行状況,ヘモグロビン値などのほか,手術の進行状況を見ながら動的な状態で判断されなければならない.輸血にしばしば副作用が伴い,GVHD(graft-versus-host disease),感染症は致死的な場合もある.食道癌手術では輸血の機会が多く,これらの副作用を回避するため,手術前に自分の血液を予め採取保存する自己血輸血が推奨されている.輸血後GVHDの予防に,放射線照射(照射血輸血)も行われている.

キーワード
食道癌, 輸液, third space, 輸血

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