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日外会誌. 97(6): 409-415, 1996


特集

食道癌外科治療の実際

食道癌手術の術前管理と処置
(4)インフォームド・コンセント

滋賀医科大学 第1外科

小玉 正智 , 川口 晃

I.内容要旨
患者の権利擁護を基本原則としたinformed consent(IC)は,医療従事者からの十分な説明と患者側の理解,納得,選択,選択,同意といった内容から構成されている.ICを考える上での食道癌の特徴としては①高齢者や進行例が多いこと,②悪性度が高いこと,③手術侵襲が大きく手術死亡が約3%に認められ,また手術症例の過半数に何らかの合併症が認められること④手術法および放射線治療,化学療法を含め,選択可能な治療法が多岐にわたることなどがあげられる.そのため,手術を受けようとする患者は患者自身が担う病態についてしっかりと認識することが大切である.またそのためにも,病名の告知や手術侵襲について十分な説明が必要になってくるが,患者にどの程度のことを告知するのが妥当であるかの判断は医師の裁量範囲にあってもよいと思われる.一方「治療への同意」に関しては,表在癌に対する内視鏡下粘膜切除術の適応や放射線治療の適応,あるいは高度進行例におけるneoadjuvant therapyの問題を含めた進行度や耐術能に応じた各治療法に関する情報を提供せねばならない.実際にI.Cを行っていく上では,原疾患の状況,進行度,考えられる治療法および手術の必要性,耐術能,術後合併症,集学的治療,麻酔等についての説明を多用することによりわかりやすく説明するとともに,説明書を添えることでいっそう理解を深めるように心がける必要がある.最後に説明をうけた内容について患者が充分に理解,納得したうえで治療法に同意するといった確認の証として同意書を作製するが,I.Cが単なる民法上の契約に終わることなく,I.Cを通じて相互の信頼関係が得られるように努力することが重要であろう.

キーワード
食道癌, Informed consent, 納得と同意


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