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日外会誌. 97(4): 317-322, 1996


特集

胃癌外科治療の最近の進歩

将来の胃癌治療が目指す途

東京慈恵会医科大学 外科学講座第2

青木 照明 , 高山 澄夫 , 二村 浩史 , 堤 純

I.内容要旨
最近の邦文文献考察を中心に,近未来における胃癌治療の予期される治療方法について検討した.
近年の分子生物学の進歩には目を見はるものがあり,個々人の胃癌高危険遺伝子変異をゲノム分析から予知し,胃癌発生あるいは進展を早期に診断・予防し,外科治療を必要としなくなることが最も望ましく,期待される状況である.
しかし,未だ近い将来においては,この目的達成のための分子生物学的研究は精力的に進展させることが要求される.すなわち「胃癌発生機序」や「胃癌の生物学的特性」が明らかにされねばならないし,ゲノム分析から発見されるであろう高危険群患者における病巣の早期発見には,超音波内視鏡や電子内視鏡のさらなる進歩・開発が必要となろう.
胃癌の分子生物学的悪性度の認識に立脚した,より高精度に定義される低侵襲手術や拡大手術の適応や工夫への挑戦は未だ当分の間必要であろう.
遺伝子治療を利用した,免疫化学療法や化学療法は本疾患の制圧に最も大きな希望を与えてくれる方法であろう.
しかしながら,現時点においてはHelicobacter Pylori感染を基盤に有する“良性潰瘍胃”の発癌予防に直接的関心が払われることが急務である.
以上述べた目的が完全に達成されるまでは,いかなるタイプの外科治療法においても,術後障害は大きな問題の一つとして残り続けるであろう.

キーワード
胃癌, ゲノム分析, 分子生物学, 遺伝子治療


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