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日外会誌. 97(4): 279-285, 1996


特集

胃癌外科治療の最近の進歩

早期胃癌に対する腹腔鏡下手術
-その適応と問題点-

1) 慶應義塾大学 医学部外科
2) 慶應義塾大学病院 内視鏡センター

大上 正裕1) , 大谷 吉秀1) , 熊井 浩一郎2) , 久保田 哲朗1) , 北島 政樹1)2)

I.内容要旨
教室では,1992年3月より早期胃癌の内,1)術前深達度診断で,m,2)Ila<25mm,3)Ilc<15mmかつul(一)を満たすものに対しては,リンパ節転移の危険性がほとんどないとの判断から,lesion lifting法による腹腔鏡下胃局所切除術ならびに腹腔鏡下胃内粘膜切除術の2種類の腹腔鏡下手術を積極的に施行し,これまでに40症例に対して良好な手術成績をおさめている.これらの手術法の最大の特徴は,低侵襲性と臓器温存性にあり,さらに水平方向,垂直方向ともに十分なsurgical marginを確保した確実な病巣切除と十分な組織学的検索が可能なことから,もっとも重要な根治性を満足すると考えている.問題点としては,術前診断精度の限界から結果的にある程度のsm1症例が含まれてくることが避けられないことが挙げられるが,教室の適応の範囲内の症例であればほとんどが局所切除で根治手術になると考えている.しかしながら,病理結果により再度開腹胃切除,リンパ節郭清の必要となる可能性は否定できないため,癌告知のみならずその可能性に対して十分なインフォームド・コンセントを得ておくことが重要である.

キーワード
腹腔鏡下手術, 早期胃癌, 内視鏡的粘膜切除術, lesion lifting 法, 腹腔鏡下胃内粘膜切除術


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