[書誌情報] [全文PDF] (3693KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 97(4): 257-262, 1996


特集

胃癌外科治療の最近の進歩

Helicobacter pyloriと胃癌

兵庫医科大学 第4内科

谷田 憲俊 , 坂上 隆 , 中村 好廣 , 川浦 昭彦 , 日笠 豊 , 下山 孝

I.内容要旨
H. Pyloriは,胃炎・胃発癌モデルにおいて,胃炎から癌発生母地の腸上皮化生を惹起して,胃発癌に導くとされる.H. Pylori感染が続くと,年率約1%の割合で萎縮性胃炎になる.H. Pyloriは,胃癌患者に高率に感染している.また,胃癌発生頻度の高い地域や国ほど,H. Pyloriの感染率も高率である.症例対比研究やプロスペクティブ研究においても,H. Pyloriは胃発癌の相対危険度を高めるという結果が得られる.H. Pyloriはp53遺伝子やDCC遺伝子,APC遺伝子異常を発現させる.一方,胃発癌実験では,H. Pyloriは発癌を抑制する成績を示したり,逆に促進するかのような成績を示すなど不定だった.このように,H. Pyloriが発癌を来すという証明が疫学的知見以外ないと認識されているにもかかわらず,H. Pyloriは“definitebiological carcinogen”とWHO/IARCに指定された.その理由には,機序はどうあれ胃発癌に関与していることは明らかだという見解による.胃癌対策には,若年時代のH. Pylori感染抑制が必要である.また,胃粘膜萎縮,胃発癌についてのH. Pyloriに関するいずれの研究でも,H. Pylori感染以外に重要な要因があることが示されている.H. Pyloriと胃発癌の関係については,今後に残された課題の方が多い.本稿では,それらの点についてわれわれの成績も加えてまとめた.

キーワード
Helicobacter pylori, 胃炎, 胃癌, 胃発癌実験

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。