[
書誌情報]
[
全文PDF] (1425KB)
[会員限定・要二段階認証]
日外会誌. 96(12): 792-798, 1995
原著
乳癌の超音波画像所見における浸潤度と予後に関する検討
I.内容要旨乳癌の病理組織像における浸潤度(inf)が予後因子となるかを累積生存率を用いて検討した.更にinfが超音波画像でBoundary echo(BE)として表現されるものと考え,BEの形態をType I~IIIに分類し,病理組織標本における乳癌の浸潤様式と対比させ,その結果から超音波画像上のinf(U-INF)を設定しinfとの相関,リンパ節転移の程度(n因子)との相関につき検討したので報告する.対象は当科にて手術施行した浸潤性乳管癌で,inf別生存率の検討が1982年1月~1989年12月の169例で,BEに関する検討が1990年1月~1993年12月までの108例である.その結果infαとβ,αとγの間で生存率に有意の差が見られた(各々p=0.0458,0.0352).BEと組織像との対比ではType Iは浸潤がないか弱い浸潤,Type IIは浸潤のないものから膠原線維を伴う強い浸潤まで様々で,Type IIIは殆どが膠原線維に富む強い浸潤であった.これらの所見を基に超音波画像上のinf(U-INF)を以下のように定めた.即ちType IはU-INFα,Type IIとIIIは浸潤度としては差がなくともにU-INFγ,Type IとType II,IIIの混合型はType IIやIIIが腫瘍全周の50%以上を占めればU-INFγ,50%未満の場合はU-INFβとした.このようにして定めたU-INFはinfとの間にp< 0.0001と強い相関が見られ,またn因子とも相関関係があった(p=0.0038).
以上よりinfは乳癌の予後因子と考えられ,術前に超音波画像でBEからinfを推定することができ,またリンパ節転移の術前診断にも貢献すると考えられた.
キーワード
乳癌, 浸潤度, リンパ節転移, 超音波診断, Boundary echo
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。