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日外会誌. 96(11): 773-778, 1995


原著

腹部大動脈瘤手術と冠状動脈疾患の検討

昭和大学 医学部外科
*) 現 昭和大学藤が丘病院 胸部心臓血管外科

田中 弘之*) , 舟波 誠 , 関口 茂明 , 成澤 隆 , 松尾 義昭 , 森保 幸治 , 高場 利博

(1994年3月29日受付)

I.内容要旨
腹部大動脈瘤(AAA)に冠状動脈疾患が及ぼす影響を評価するために,過去10年間に当科で施行されたAAA待期手術102症例を冠状動脈疾患の有無で次の3群に患者を分類した.I群(66例):冠状動脈疾患のない群.II群(26例):安定冠状動脈疾患群.III群(10例):不安定冠状動脈疾患群.冠状動脈造影はジピリダモール負荷心筋シンチグラフィーで陽性のものとしII群とIII群のみに施行した.I群とII群にはAAAの手術のみを施行し,II群では術前から厳重な術環系管理を行った.III群10例中,無症状の腹部大動脈瘤8例では,冠血行再建術を施行後,AAAの手術を2期的に施行した.切迫破裂の腹部大動脈瘤の2例に対しては,1例ではAAAの手術後に冠血行再建術を施行し,他の1例では冠血行再建術とAAAの同時手術を施行した.II群に1例の周術期心筋梗塞を認めたが,I群,II群に術後早期心臓死はなかった.III群では同時手術の1例を術後LOSにて失ったが,2期的手術群の他の9例に術後心臓合併症も早期死亡も認めなかった.以上より薬物負荷心筋シンチグラフィーをスクリーニングに用いることにより,AAA全例に術前冠状動脈造影の必要はなく,また不安定な冠動脈疾患がある場合,2期的手術は安全性が高いと考えられた.

キーワード
腹部大動脈瘤, 冠状動脈疾患, ジピリダモール負荷心筋シンチグラフィー, 冠状動脈撮影, 2期的手術


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