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日外会誌. 96(11): 760-765, 1995


原著

ラット肝細胞癌における内分泌療法の実験的研究

産業医科大学 第1外科

膳所 富士男 , 大浪 澄子 , 大里 敬一

(1994年3月31日受付)

I.内容要旨
ヒト肝細胞癌にAndrogen Receptor(AnR)とEstrogen Receptor(ER)の存在が知られているが,binding capacityが低いことより,内分泌療法の有効性が疑問視されている.しかし,我々は肝細胞癌のAnRとERのdissociation constantが良好であることに着目し,ヒト肝細胞癌の性ホルモン受容体と性格が類似したラット肝細胞癌AH66Fを用いて,肝細胞癌における内分泌療法の効果を検討した.まずラット肝細胞癌AH66FはAnR(+),ER(+)でそのbinding capacityは低くdissociation constantとdisplacementはともに良好でヒト肝細胞癌と同じ傾向にある性ホルモン受容体の状態であること,そしてTamoxifen投与にてこのAnRとERが陰性化することを確認した.そこでラット肝細胞癌AH66Fをドンリュウラットの腹腔内へ移植し,各種内分泌療法を行い対照群と生存日数を比較した.雄ラットにおいて睾丸剔出群(p< 0.01)とTamoxifen投与群(p< 0.01)でともに有意の生存日数の延長を認めたが,medroxyprogesterone acetate(MPA)投与群では有意差は認めなかった.雌ラットにおいて卵巣剔出群(p< 0.001)とTamoxifen投与群(p< 0.001)で有意の生存日数の延長を認めたが,MPA投与群では対照群と有意差は認めなかった.またAnR(-),ER(-)のラット肝細胞癌AH60Cを用いた実験では,各種内分泌療法は無効であった.以上の結果より性ホルモン受容体陽性のラット肝細胞癌において内分泌療法の有効性が確認された.

キーワード
肝細胞癌, Androgen Receptor, Estrogen Receptor, 内分泌療法


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