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日外会誌. 96(8): 550-556, 1995


原著

食道表在癌のリンパ節転移に対する臨床病理学的,免疫組織学的検討
-E型カドヘリンおよび α カテニンの発現について-

大阪大学 医学部第2外科

田村 茂行 , 塩崎 均 , 門脇 隆敏 , 井上 雅智 , 岡 博史 , 松井 成生 , 森 武貞

(1993年10月29日受付)

I.内容要旨
食道表在癌においてリンパ節転移の術前予測の可能性について検討するために,まず,sm癌30例をリンパ節転移陰性例(13例)と陽性例(17例)に分け,臨床病理学的因子について比較した.さらに,表在癌における細胞間接着機能異常とリンパ節転移との関連を検索するため,Ca++依存性細胞間接着因子であるE型カドヘリンの免疫組織染色における発現性を27例(mm癌:9例,sm癌:18例)について検討した.また,このうち16例(mm癌:6例,sm癌:10例)については,カドヘリンの機能を制御している細胞内裏打ちタンパク質の一つであるαカテニンの発現性も同時に染色し検討した.
sm癌のリンパ節転移陰性群と陽性群の比較検討では占居部位,細分類した深達度,組織型,肉眼型などの臨床病理学的因子や,腫瘍の最大長径,sm層浸潤の長径,隆起部分の長径や高さには有意な差は認められなかったが,リンパ管侵襲はリンパ節転移陽性群で有意に高率であった(p< 0.05).カドヘリンの発現性においては,カドヘリンの保たれている症例では14例中1例(7.1%)のみにリンパ節転移を認めたが,カドヘリンの減弱あるいは消失している13例では6例(46.2%) と高率にリンパ節転移を認めた(p< 0.05).また,カテニンの発現性の検討では,均一に発現している症例や一部が減弱している症例(13例)では,リンパ節転移は1例のみに認められたが,カテニンの消失している症例(3例)では全例でリンパ節転移が認められた(7.7% vs. 100%:p< 0.01).
以上より,表在癌においてE型カドヘリンが減弱あるいは消失し,αカテニンが消失している症例はリンパ節転移をきたしやすく,これらの評価が表在癌のリンパ節の術前予測の参考資料になり得ると思われた.

キーワード
食道表在癌, リンパ節転移, 細胞間接着因子, E型カドヘリン, α カテニン


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