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日外会誌. 96(7): 473-484, 1995


原著

エスマルヒ駆血法による下腿動脈自家静脈バイパス術後の末梢吻合部遠隔期形態変化に関する臨床的研究
-血管撮影所見からの検討-

東京大学 医学部第2外科

高山 豊

(1994年2月22日受付)

I.内容要旨
動脈剥離を血管鞘前面までにとどめ,血管鉗子を使用しないエスマルヒ駆血法による吻合を施行した自家静脈による膝関節以下の動脈への血行再建術21例23肢に対し,術後早期及び遠隔期に血管撮影を施行して,末梢吻合部の形態変化を観察した.術後早期に比べ血行再建遠隔期には,宿主動脈末梢側の口径は75%の症例で増大する一方,グラフト径は31%において縮小し,50%においてほぼ一定であって,両者の差は1.7±0.4mmから1.0±0.1mmに縮小した.また,グラフトと宿主動脈末梢側とのなす角度(吻合角)が79%において減じた.さらに,従来血行再建遠隔期に起こりグラフト閉塞の原因となると言われていた宿主動脈の動脈硬化の進展所見は観察されなかった.静脈グラフトは,吻合部近傍のコブラ頭状の膨隆,スリット状の狭窄等の様々な不整像が補正され,一定の径を持つ凹凸のない導管に近づくように変化した.吻合部近傍の動脈の分枝はよく温存され,遠隔期においても良好に開存していた.経過中,4例において狭窄が発見され,revision手術が行われた.これらは近位吻合部狭窄(1例),グラフト間の吻合部狭窄(2例),グラフト体部の狭窄(1例)であって,従来血行再建遠隔期閉塞の最大の原因であった末梢吻合部の狭窄は認められなかった.これらの結果より,宿主動脈に対する手術侵襲を最小限に限定するエスマルヒ駆血法による吻合部は,高度の疲痕形成を免れ,動脈硬化を惹起することなく,自律的な動脈の拡張を可能にしており,これがきわめて良好な遠隔開存率を保持できる要因であると結論された.

キーワード
下肢動脈血行再建術, 自家静脈バイパス術, エスマルヒ駆血法, 遠隔期血管撮影, 遠隔開存率

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