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日外会誌. 96(7): 439-447, 1995


原著

モノクローナル抗体Ki-67を用いたフローサイトメトリーによる原発性肝細胞癌増殖活性の検討

順天堂大学 医学部第2外科

渡辺 心

(1994年1月18日受付)

I.内容要旨
細胞周期の中で,増殖期(G1,S,G2/M期)にある細胞の核蛋白に対するモノクローナル抗体であるKi-67を用いてフローサイトメトリーにて肝細胞癌の増殖活性を測定し,この因子の新たな診断学的因子としての可能性につき検討した.対象は教室で施行した肝切除例のうち,術前未治療で,かつ肉眼的に変性壊死のない22症例を対象とした.肝硬変例14例,非硬変例8例で,これらの癌部及び非癌部新鮮標本についてKi-67-FITC処理後PI染色し,フローサイトメトリーにて20,000個の細胞についてtwo-parameter標示を行いコントロール群よりカットオフ値を設定し,Ki-67 labeling rateを算出した.なお癌部については核DNA量も測定した.Diploid,Aneuploidが各々11例ずつでそのKi-67 labeling rateの平均値は,12.9±11.4%,12.7±9.7%と有意差を認めなかった.病理組織学的因子との比較では,癌部のKi-67 labeling rateの平均値は,高分化群と中,低分化群間にのみ有意差を認めたが他のいずれの因子とも有意差を認めなかった.肝硬変群と非硬変群の癌部におけるKi-67 labeling rateの平均値は,各々17.0±10.6%,5.3±3.5%と両者間で有意差を認めた.非癌部肝組織では,非硬変群の平均0.7±0.2%に対し3.1±1.8%と肝硬変群が有意に高値を示した.以上より併存する肝病変が,癌腫の増殖活性に何らかの影響を与えている可能性が示唆された.癌部のKi-67 labeling rateは非癌部に比していずれも高値を示し,また両者間に正の相関を認めた.このことより本法は形態学的に診断が困難な肝細胞癌において新たな診断学的補助因子となり得る可能性が示唆された.さらにMIB-1抗体を用い免疫染色を行いフローサイトメトリー法との有意な相関関係を確認した.本法による解析は,肝細胞癌の増殖活性を知る上でも有用であると考えられた.

キーワード
Ki-67, 原発性肝細胞癌, 増殖活性, フローサイトメトリー

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