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日外会誌. 96(4): 213-222, 1995


原著

胃癌における DNA Ploidy Pattern,c-erbB-2蛋白の発現及び PCNA index

金沢大学 医学部第2外科

高村 博之 , 米村 豊 , ルイス フォンセカ , 二宮 致 , 津川 浩一郎 , 三輪 晃一 , 宮崎 逸夫

(1992年12月22日受付)

I.内容要旨
胃癌164例のパラフィン包埋切片を用いて,DNA Ploidy Pattern,c-erbB-2蛋白の発現,PCNA indexの3者を調べ,その臨床病理学的因子および予後との関係について検討した.c-erbB-2蛋白およびPCNAの発現はモノクローナル抗体を用いたLSAB法にて免疫組織化学的に検索した.DNA Ploidy Patternは落射型顕微螢光測光装置にて行った.c-erbB-2蛋白陽性率は19%であり,PCNA indexは平均40%であった.またAneuploid例は43%であった.臨床病理学的因子との検討では,DNA Ploidy Patternにおいて,ly(+),v(+)例はそれぞれ陰性例に比べて有意にAneuploid例が多かった.またly(+),ps (+),v(+)例はそれぞれ陰性例に比べて有意にc-erbB-2蛋白陽性率が高かった.PCNA indexにおいて,ly(+)例は陰性例に比べて有意にPCNA indexが高かった.DNA Ploidyとc-erbB-2蛋白,DNA PloidyとPCNA indexの間には有意な相関は認められなかったが,c-erbB-2蛋白陽性例は陰性例に比べてPCNA indexが有意に高かった.各因子をCoxの比例ハザードモデルで検討すると,リンパ節転移,漿膜浸潤,肝転移,c-erbB-2蛋白の発現,静脈侵襲の5因子が胃癌の予後を規定する独立した因子であると考えられた.Aneuploid例,c-erbB-2蛋白陽性例,PCNA index高値群はそれぞれ予後不良であり,Diploidでかつc-erbB-2蛋白陰性例が最も予後良好であったのに対し,Aneuploidでかつc-erbB-2蛋白陽性例が最も予後不良であった.またPCNAを組み合わせることによりc-erbB-2蛋白陰性例やAneuploid例をそれぞれ予後良好と不良の2群に分けることが可能であった.DNA Ploidy Pattern,c-erbB-2蛋白の発現,PCNA indexを組み合わせることは胃癌の予後を推察するうえできわめて有用であった.

キーワード
胃癌, c-erbB-2蛋白, DNA Ploidy Pattern, PCNA


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