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日外会誌. 96(4): 207-212, 1995


原著

気管前面の微細な気管支動脈の走行に対する解剖学的研究
-食道癌手術での温存を目的として-

1) 千葉大学 医学部第2外科
2) 千葉大学 第1解剖

舟波 裕1) , 奥山 和明1) , 小出 義雄1) , 神津 照雄1) , 木下 弘寿1) , 嶋田 裕2) , 磯野 可一1)

(1993年11月15日受付)

I.内容要旨
食道癌手術における縦隔リンパ節郭清時の気管支動脈の温存を目的として,肉眼解剖学的検討では剖出しきれない気管前面の微細な気管支動脈を,3-Dimensional Computed Tomography(3D-CT),Digital Subtraction Angiography(DSA)といった画像診断の技術を用いて描出した.対象として血管内の血液を除去した後に固定した成人解剖体より摘出された肉眼解剖学研究用標本である縦隔を用いて,3D-CTによる検討は5標本で,DSAによる検討は7標本で行った.3D-CTによる観察では,気管の前面に気管支動脈の編み目様の走行(vascular network)が描出された.また,DSAでは肋間気管支動脈から造影剤を注入することにより,この気管前面のvascular networkを通じて大動脈に起始する気管支動脈,気管の頭側の動脈に起始する気管支動脈が互いに交通しあっている像が観察された.これから手術中にこのvascular networkと肋間気管支動脈を温存することにより,仮に他の気管支動脈を一部損傷しても,気管・気管支の血流は保たれるものと考えられた.

キーワード
食道癌手術, 気管支動脈, 解剖学的検討, 3次元X線CT, DSA

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