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日外会誌. 96(3): 160-167, 1995


原著

肝移植における cyclosporine 経門脈的投与による局所免疫抑制療法の検討

奈良県立医科大学 第1外科

高 済峯 , 中島 祥介 , 金廣 裕道 , 中野 博重

(1993年11月2日受付)

I.内容要旨
肝移植におけるCyclosporine(CsA)経門脈的投与による局所免疫抑制の効果について検討した.雑種成犬に同所性同種肝移植を施行し,免疫抑制法の違いにより実験群は,group I:無処置(n=7),group II:CsA 5mg/kg/day間歇的静脈内投与(n=7),group III:CsA 3mg/kg/day持続静脈内投与(n=5),group IV:CsA 3mg/kg/day持続門脈内投与(n=8)とした.免疫抑制療法は移植当日より14日間行った.Median survival timeはgroup I:7日(6~13日),group II:10日(7~16日),group III:7日(6~10日),group IV:18日(10~85日)であり,group IVは他のgroupに比べ生存日数の有意の延長を認めた(p< 0.025).血清総ビリルビン値は移植後7日目で,group I:2.2±1.9mg/dl,group II:2.2±2.1,group IV:0.34±0.18であり,group IVで有意に低値であった(p< 0.05).移植後6日目の血清GOT値は,group I:725±7071U/l,group II:303±203,group III:1,881±1,881,group IV:97±60であり,group IVで有意に低値であった(p< 0.05).移植肝の病理組織所見でも,group I,II,IIIの多くがmoderate以上の急性拒絶反応を示したのに対し,IV群では拒絶反応が抑制されていた.末梢全血中のCsA濃度(ng/ml)は移植後3,5日目でgroup III:300±102,483±227,group IV:182±41,238±49と,静脈内投与に比べ門脈内投与で有意に低値(p< 0.05)を示した.また,7日目のgroup IVの末梢血単核球DNAのSG2M%は10.6±7.4で,拒絶のみられたgroup IIの11.3±2.9と同等の値を示し,肝以外での免疫反応が保たれていることが示唆された.CsA門脈内投与による局所免疫抑制療法は,全身的副作用を軽減しつつ効果的に拒絶反応を抑制しうる方法であると思われた.

キーワード
肝移植, 局所免疫抑制, サイクロスポリン, 門脈内投与


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