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日外会誌. 96(2): 116-120, 1995


症例報告

“特発性″腎破裂の1例

1) 国立療養所東京病院 外科
2) 国立療養所東京病院 病理

井上 純雄1) , 仙波 大右1) , 蛇沢 晶2) , 森塚 俊彦1) , 深柄 和彦1) , 神谷 須賀男1) , 片山 透1)

(1993年10月5日受付)

I.内容要旨
非外傷性の腎破裂はまれな病態で,時に急性腹症の原因となるほか腎癌の発症様式となることも報告されている.今回,最大径3cmの腎癌による腎被膜下血腫の症例を経験したので報告する.患者は52歳の生来健康であった家婦で,前兆もなく急性腹症を思わせる強い腹痛と嘔吐が入院前日に突如出現した.軽度の血尿のほか白血球増多,発熱も一過性に認められたがまもなく自覚症状はほぼ消失した.US,CT,MRI等の画像診断では腎周囲あるいは腎被膜下血腫の診断が得られたが腫瘍性の病変は検出し得なかった.しかし,既に100例以上の特発性腎破裂が集計された欧米からの報告に基づき待期的に左腎摘出術を施行した.腎癌の組織型は顆粒細胞型の腎癌で進行度はpT2,pN0,pM0であった.原疾患の診断の困難さと治療方針の決定についての問題にも言及した.

キーワード
特発性腎破裂, 腎癌, 被膜下血腫


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