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日外会誌. 96(2): 106-115, 1995


原著

経内視鏡的マイクロバスキュラー・ドップラー血流計による食道・胃静脈瘤の血行動態の評価

1) 北海道大学 医学部第2外科教室
2) 北海道消化器科病院 

金谷 聡一郎1) , 加藤 紘之1) , 道家 充1) , 奥芝 俊一1) , 下沢 英二1) , 堀田 彰一2)

(1993年9月2日受付)

I.内容要旨
門脈圧亢進症における食道胃領域の血行動態の解明は,静脈瘤治療に際して非常に重要であるが,非侵襲的に,また生理的に測定可能な方法が確立されていないのが現状である.20MHzマイクロバスキュラー・ドップラー血流計(MF20) は,直径0.2mmの微小血管の血流速度と血流方向を測定できる高い周波数をもつ超音波パルスドップラーである.今回,内視鏡的に直径1mmの極小プローベを接続した,マイクロバスキュラー・ドップラー血流計(Transendoscopic Microvascular Doppler Sonography:EMDS)を用いて,門脈圧亢進症における未治療群21例と,シャント手術後群26例における食道・胃静脈瘤の血流方向を測定し,血管造影と対比して評価した.未治療群の食道・胃静脈瘤の血流方向は全例がプローベに向かってくるForwardの血流方向であった.未治療群のうち血管造影と対比し得た13例では全例に食道静脈瘤または胃静脈瘤の描出を認め,内視鏡所見もあわせEMDSで測定した静脈瘤と一致した.シャント手術後群では,26例中21例がプローブから遠ざかるAwayの血流方向であった.シャント手術後群は全例が血造影との対比が可能であり,Awayの血流を認めた症例はシャント選択性が良好で遠肝性側副血行路を認めず,術後低圧系であるシャント方向に静脈瘤の血流が導かれていることを証明し得た.シャント手術後で食道・胃静脈瘤の再発傾向にある2例ではForwardの血流を認め,血管造影では遠肝性側副血行路として静脈瘤の描出が確認された.また,シャント手術直後の2例とRC signの消失が遅延している1例では,Forward and Awayの両方向の血流を認めた.以上,本法は,食道・胃静脈瘤の血行動態の非侵襲的な評価法として非常に有用であり,幅広い応用が期待できる.

キーワード
門脈圧亢進症, 食道胃静脈瘤, マイクロバスキュラードップラー血流計, シャント手術


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