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日外会誌. 96(2): 97-105, 1995


原著

抗膵癌モノクローナル抗体 Nd2の F(ab')2 fragment の体内動態とIFN-γ併用による腫瘍集積性の増強効果に関する研究

大阪市立大学 医学部第1外科

金銅 康之

(1993年9月1日受付)

I.内容要旨
モノクローナル抗体Nd2は,膵癌培養細胞株SW1990のムチン分画を免疫原として作成されたマウスモノクローナル抗体である.その腫瘍特異性および腫瘍集積性についてはこれまでに良好な成績を報告してきた.また,その特徴の一つとして,Nd2抗原が非分泌性で血中に循環していないことが挙げられる.今回,Nd2抗体の腫瘍集積性の向上および腫瘍集積に要する時間の短縮等を目的として,INF-γの併用が腫瘍集積性に及ぼす影響とNd2抗体のF(ab')2 fragmentのSW1990 bearing nude miceにおける体内動態について検討した.
intact Nd2では静脈内投与後3日目に腫瘍集積が最大(45.0%)となるのに対して,F(ab')2 fragmentでは1日目に最高値(38.9%)をとり,nude miceにおける体内動態には明らかな差異が認められることが確認された.またF(ab')2 fragmentでは,投与後12時間目,1日目の尿中排泄絨がintact Nd2と比べて著明に多く(72.2%,39.3%),血清クリアランスが高いこと,組織血液比が大きくなることも判明した.
INF-γをNd2投与48時間前から96時間後まで8時間毎に腹腔内投与してNd2の体内動態を検討したところ,INF-γでは対照群と比べて3日目の腫瘍の%ID/gに有意差が認められた(59.9%,26.2%; p< 0.05).
以上の成績は,MAb-Nd2が種々の方法によって体内動態が改善されうる事を示唆するものであり,今後の臨床応用への可能性を示すと考えられる.

キーワード
抗膵癌モノクローナル抗体 Nd2, F(ab')2 fragment, IFN-γ, 膵癌培養細胞株SW1990, 膵癌


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