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日外会誌. 96(2): 80-87, 1995


原著

胃切除後残胃の癌の栄養動脈とリンパ流に関する研究
-血管造影法と微粒子活性炭点墨法による検討-

京都府立医科大学 第1外科教室

加藤 誠

(1993年7月12日受付)

I.内容要旨
術前に血管造影を施行した残胃の癌29例を対象として,左胃動脈温存の有無別に残胃の癌の栄養動脈を検索した.また胃上部初発癌96例の血管造影所見から栄養動脈を判定し,リンパ節転移部位と栄養動脈の関係を検索した.さらに残胃の癌13例に,微粒子活性炭CH40の術前内視鏡下点墨法を施行して残胃の癌のリンパ節黒染度を観察した.そしてこれらの検索から以下の結果を得た.1)残胃の癌29例中25例で栄養動脈を判定しえた.左胃動脈温存群(11例)では栄養動脈の主役は左胃動脈であるのに対し,左胃動脈切離群(14例)では後胃動脈,左胃大網動脈,短胃動脈などの脾動脈系の動脈が栄養動脈となっていた.2)胃上部初発癌の栄養動脈は左胃動脈が最も多く,次いで後胃動脈,短胃動脈,左胃大網動脈などの順であった.胃上部初発癌のリンパ節転移経路は,左胃動脈が栄養動脈の場合,左胃動脈系のリンパ節から大動脈周囲リンパ節に向かう経路が主流であった.これに対し脾動脈系を栄養動脈とする場合,脾動脈系のリンパ節から大動脈周囲リンパ節に向かう経路が主流であった.3)残胃の癌13例のリンパ節黒染度は,左胃動脈温存群(8例)で左胃動脈系リンパ節の黒染度が比較的高かった.一方脾動脈系リンパ節の黒染度は両群とも比較的高く,また大動脈周囲リンパ節の黒染度は左胃動脈切離群75.0%,左胃動脈温存群77.3%で両群とも高率であった.
以上より左胃動脈が温存された残胃の癌では左胃動脈が栄養動脈となることが多く,リンパ流は左胃動脈系および脾動脈系のリンパ節から大動脈周囲リンパ節へと向かうが,左胃動脈が切離された残胃の癌では脾動脈系の動脈が栄養動脈となることが多く,リンパ流は脾動脈系のリンパ節から大動脈周囲リンパ節に向かう流れが主流であると考えられた.

キーワード
残胃の癌, 残胃の癌の血管造影, 胃上部初発癌の血管造影, 微粒子活性炭術前点墨法, 残胃の癌のリンパ流


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