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日外会誌. 96(2): 72-79, 1995


原著

外科侵襲下におけるIGF-Iの効果
-熱傷ラットによる基礎的検討-

1) 千葉大学 医学部第1外科
2) 千葉大学 動物実験施設

森嶋 友一1) , 田代 亜彦1) , 高木 一也1) , 山森 秀夫1) , 真島 吉也1) , 中島 伸之1) , 伊藤 勇夫2)

(1993年8月26日受付)

I.内容要旨
外科侵襲下におけるinsulin-like growth factor-I(IGF-I)の効果を,熱傷ラットを用いて検討した.
(方法)約220gのSD系雄性ラットに対して,投与エネルギー200kcal/kg/day,アミノ酸量6.2g/kg/dayのTPNを6日間行った後に,体表面積の20%のIII度熱傷を作成した.熱傷後よりIGF-Iを4mg/kg/dayで2日間持続投与した群(IGF-I群,n=14)と非投与対照群(n=12)に分けて検討した.
(結果)体重減少はIGF-I投与により有意に抑えられた(12.2±9.4 vs 23.6±5.5g,p< 0.01).熱傷後2日間の累積窒素平衡も有意に改善した(129.97±57.10 vs 9.66±54.53mg N/2days,p< 0.01).全身蛋白代謝は,回転,合成,分解速度いずれもIGF-I群で増加したが(各々p< 0.01,0.01,0.05),特に合成速度の増加が著明であった.熱傷時の高血糖はIGF-I群で有意に抑制された(120±33 vs147±23mg/dl,p< 0.05).水分出納は両群問に有意差はないものの,IGF-I群で水の貯留傾向を認めた.臓器重量は脾,腎,上・下部小腸,大腸で有意にIGF-I群で高値を示した(各々p< 0.05,0.02,0.01,0.01,0.01)が,上・下部小腸粘膜は蛋白含有量も有意に増加し(各々169.1±38.8 vs 109.4±32.3mg・prot.,103.8±34.4 vs 65.6±27.6mg・prot.共にp< 0.05),また蛋白合成率も有意に増加していた(各々111.0±12.6 vs 81.4±22.0%/day,91.9±8.8 vs 67.8±6.4%/day,共にp< 0.01).腸管を組織学的に検討すると,粘膜層の厚みが増しており,過形成の像であった.
外科侵襲下においては蛋白異化および外科的糖尿病が惹起されるが,これらを改善する上でIGF-I投与は極めて有用と思われた.また,IGF-Iの効果は消化管に対して最も顕著に認められた.

キーワード
insulin-like grouth factor-I(IGF-I), 窒素平衡, 全身蛋白代謝回転速度, 臓器蛋白合成率


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