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日外会誌. 96(2): 59-71, 1995


原著

Growth chamber を用いた抗癌剤感受性試験
-基礎的・臨床的検討-

慶應義塾大学 医学部外科学教室

高原 哲也

(1993年8月24日受付)

I.内容要旨
ゲル・マトリックスを主体とした親水性,半固体のgrowth chamber(GC)を用いたin vitro抗癌剤感受性試験(GCアッセイ)は付着系(anchorage dependent)の正常間質細胞の増殖を抑制し非付着系(anchorage independent)の癌細胞を選択的に増殖させることを特徴とする.著者は継代中の培養細胞株7株,ヌードマウス可移植性ヒト癌株16株,臨床材料60検体を用いて本アッセイを施行した.抗癌剤としてmitomycin C(MMC),adriamycin(ADM),cisplatin(DDP),5-fluorouracil(5-FU)の4薬剤を用いた.GC内にmedium 199を主体とした単離細胞浮遊液を注入し,5mlの培養液と各種濃度の抗癌剤を混じた60mmのシャーレ内にこのGCを各3個互いに接触しないように静置した.最終薬剤接触濃度はMMCとDDPは0.1~100μg/ml,ADMは0.01~10μg/ml,5-FUは1.0~1,000μg/mlとした.一週間の培養後,培養上清中のhexosaminidase活性をp-nitrophenyl-N-acetylglucosaminideを基質として,吸光度405nmで比色計を用いて測定した.培養細胞株を用いた基礎的検討では,非癌細胞株のGC内増殖は光顕的および電顕的所見により抑制が観察され,判定可能な吸光度も示されなかった.一方,ヒト癌細胞株では光顕的にも電顕的にも増殖が観察され,判定可能な吸光度がえられた.ヌードマウス可移植性ヒト癌株,臨床検体の対照群においても判定可能な吸光度がえられ,各薬剤は各種検体に対して濃度依存的な抗腫瘍効果を示した.ヌードマウス可移植性ヒト癌株より求めた本アッセイの至適カットオフ濃度はMMC 10,ADM 0.7,DDP 15.5-FU 15μg/mlであり,GCアッセイのヒト癌ーヌードマウス系に対する予測率は82/100(82.0%)であった.臨床検体についての検討では60例中55例,91.7%の判定が可能であり,臨床例における本アッセイの正診率は72.1%で,偽陰性例は1例も認められなかった.以上の成績より,本法は臨床検体を対象とした抗癌剤感受性試験に有用であると考えられた.

キーワード
抗癌剤感受性試験, growth chamber, ヌードマウス可移植性ヒト癌株, 間質細胞


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