[書誌情報] [全文PDF] (879KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 96(1): 54-57, 1995


症例報告

膵潜在癌に対し、術中膵3分割細胞診によって膵機能温存、根治切除を行い得た1例

大阪府立成人病センター 外科
1)  細胞診断科

岩本 伸一 , 石川 治 , 大東 弘明 , 今岡 真義 , 佐々木 洋 , 竹中 明美1) , 岩永 剛

(1993年8月18日受付)

I.内容要旨
内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)時に採取した膵液中に癌細胞を認めたが,術前の画像診断や術中の肉眼所見でも癌の局在領域が不明であった1例(74歳,男性)を経験した.本症例に対し術中膵頭部,体部,尾部からの膵液を別々に採取しうる3分割細胞診を開発し,それぞれの膵液に迅速細胞診を施行した.その結果,膵体部からの膵液にのみ癌細胞を得たので,膵体部切除,膵尾部一胃吻合を施行したところ,術後耐糖能障害を合併することなく,経過良好であった.組織学的検索により膵体部主膵管とその分枝に一部基底膜浸潤を伴う腺癌が認められた.本法はバルーンカテーテルを用いるという簡便な方法で根治性を損なわず,しかも可及的に膵機能を温存できるうえで意義深い.

キーワード
潜在性膵癌, 細胞診


<< 前の論文へ

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。