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日外会誌. 96(1): 19-25, 1995


原著

ラット小腸移植における末梢血リンパ球サブセットの経時的変化
-免疫抑制剤FK506投与の影響-

獨協医科大学 第1外科

小森 俊昭

(1993年8月24日受付)

I.内容要旨
小腸移植は拒絶反応が強く,臨床実施上の大きな問題と考えられている.我々は実験的小腸移植で,モノクローナル抗体を使用して末梢血リンパ球サブセットを測定し,拒絶反応のモニタリングの可能性を検討した.また,免疫抑制剤FK506(FK)投与量別のサブセット変動を測定した.
対象は200g前後の雄性ラットで,graftの上腸間膜動・静脈をrecipientの大腿動・静脈に吻合し,Thiry-Vella loopを作製する術式とした.A群はdonor,recipientともにLewisを用いた非拒絶群とし,これを対照群とした.B,C-1,C-2群はdonorにFisher,recipientにLewisを用い,B群はFK非投与の拒絶群で,C-1群はFK 0.135mg/kg/day筋注,C-2群は0.270mg/kg/dayとした.各群とも術後1,3,5,7日目における末梢血のW3/13,W3/25,OX-8,68-IB3陽性細胞を解析した.
W3/13:A,C-2群では経時的変動は軽度であったのに対し,B,C-1群では術後3,5日にA群に対し有意な低値を示した.W3/25:A,C-2群が術後3,5日に若干増加傾向を示したのに対し,B,C-2群は逆に減少傾向を示した.OX-8:B群のみ術後1日から3日へかけて明らかな減少傾向を示した.68-IB3:B,C-1群において術後1日から5日へかけて減少傾向を示した.
末梢血リンパ球サブセットの経時的変動は,T cell系が急性拒絶反応に伴って減少し,その減少の程度はFKの投与量に逆相関することから,この測定は小腸移植における拒絶反応のモニタリングに有用であると考えられた.

キーワード
小腸移植, Lymphocytes subsets, Flow cytometry, Immunological monitoring, FK506

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