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日外会誌. 96(1): 1-9, 1995


原著

閉塞性黄疸解除後の急性潰瘍発症機序

神戸大学 医学部第1外科

守友 仁志 , 長畑 洋司 , 裏川 公章 , 斎藤 洋一

(1993年5月17日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸(以下,閉黄)時には,手術や胆道感染などを契機として容易に上部消化管出血が合併し,いったん上部消化管出血が発症するとその予後はきわめて不良とされている.今回は,ラット(各群ともn=5) を用い閉黄および閉黄解除後の胃粘膜動態について検討した.
肝機能の指標として血清t-Bil• GOT • ALP値を検討すると,閉黄の持続とともに上昇し,閉黄解除後速やかに低下した.胃粘膜ヘキソース・フコース量は閉黄の持続にともない低下したが,閉黄解除後は閉黄1週・2週群では閉黄前値の水準に回復したが閉黄3週群では低値のままであった.また,胃粘膜血流量は閉黄の持続とともに低下傾向を示し,閉黄解除後は閉黄1週・2週群では閉黄前値に回復したが閉黄3週群では低値のままであった.
水浸拘束ストレスを2時間負荷すると,閉黄期間の延長にともなって潰瘍指数が上昇し冑粘膜血流量が低下したが,閉黄解除後は閉黄1週・2週群ではこれらの変動が回復したのに対し,閉黄3週群では回復しなかった.摘出冑血管灌流標本を用いた検討で,対照群および閉黄2週群ではPGE2投与後溜流圧が用量依存性に低下したが,閉黄3週群では低下しなかった.すなわち,閉黄3週群ではPGE2に対する胃血管の反応性が低下しており,胃粘膜PGE2量の有意な低下が無いにもかかわらず,閉黄解除後も軽度のストレスによって容易に胃粘膜血流量の低下をきたし潰瘍性病変が発生したと考えられた.
以上より,臨床的に閉黄時の上部消化管出血の合併を予防するためには,閉黄発生後早期に滅黄処置を施行する必要があると考えられた.

キーワード
閉塞性黄疸解除, 胃粘膜血流, PGE2, 摘出胃血管灌流圧

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