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日外会誌. 95(10): 763-774, 1994


原著

核 DNA 量,p53,PCNA からみた大腸腺腫,大腸癌の異型度と臨床病理学的因子に関する検討

日本医科大学 第2外科
*) 日本医科大学付属第 1 病院 病理部
**) 日本医科大学 第2病理

山本 英希 , 山田 宣孝*) , 浅野 伍朗**) , 庄司 佑

(1993年6月29日受付)

I.内容要旨
良・悪性境界病変を中心に大腸腺腫,大腸癌の核DNA量及びp53, PCNAの免疫組織化学的な発現を検討し,境界病変における組織学的形態と生物学的悪性度との関連,さらに浸潤癌ではPCNA labeling index (P-I) と臨床病理学的因子との相関について以下の結果と結論を得た.なお,大腸癌組織診断基準が病理医により異なることに留意し,本文中に示す独自の診断基準に従って腺腫の異型度分類を行った.
顕微蛍光装置による核DNA量測定では,高度異型腺腫26.7%, m癌69.2%,浸潤癌85.7%にaneuploid例を認め, polyploid cellも高度異型腺腫以上に認められた.
変異p53蛋白の発現は中等度異型腺腫以下では認められなかったが,高度異型腺腫44.4%,m癌53.8%,浸潤癌56.8%に認められた.そして,癌では大多数の核に局在がみられたが,高度異型腺腫では腺管の屈曲蛇行,絨毛状構造を示す部分の核に散在性に認められた.
P-Iは中等度異型腺腫27.79±8.09%,高度異型腺腫50.76±12.95%,m癌63.10±13.54%と有意に増加し,高度異型腺腫の半数で50%以上の高いP-Iを示した.浸潤癌では低分化型癌が高いP-Iであったのに対し,固有筋層を越えた分化型癌では腫瘍によって異なり,P-I≦50%群ではリンパ節転移や静脈侵襲陽性例が多く,かつ転移リンパ節のP-Iは原発巣のP-Iに比べ有意に高値であった.
以上より,細胞像ではN/C比の増加,核の極性の消失の他に,短径が増大して丸みを帯びた核,組織構造では腺管の著しい屈曲蛇行や絨毛状変化を示す高度異型腺腫は悪性ないし悪性である可能性があり, polypectomyなどにより必ず切除されるべきである.
一方,浸潤癌では分化度が増殖能を反映し,低分化型癌で悪性度が高いことが支持された.また固有筋層を越えた分化型癌では,先進部の低分化型癌や転移巣が増殖クローンとして腫瘍進展に関与していることが示唆された.

キーワード
大腸腺腫, 大腸癌, 核 DNA 量, p53, PCNA

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