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日外会誌. 95(9): 662-668, 1994


原著

網内系賦活によるラット90%肝部分切除後の肝再生増強効果

旭川医科大学 第2外科

松田 年 , 加藤 一哉 , 水戸 廸郎

(1993年4月9日受付)

I.内容要旨
90%部分肝切除後(90%PH)における20%グルコース投与による延命効果とさらに網内系(RES)を賦活化させ,90%PH後の肝再生に及ぼす効果及び生存率について検討した.RES賦活には溶連菌々体であるOK-432(5K.E./匹)を90%PH 24時間前にラットの腹腔内に投与した.実験群は90%PH後蒸留水を飲水させた(TW)群,20%glucoseを投与した(GL)群, RES賦活後20%glucoseを投与した(OK-432-GL)群の3群を作製した.90%PH後42時間目の生存率はTW群0%に対し,GL群44.2%(p<0.05),OK-432-GL群87.0%(p<0.005)と有意に改善していた.血糖の経時的変化は90%PH後2時間目でTW群では79.5±40.7mg/dlであるのに対しGL群では227.8±97.7mg/dlと有意(p<0.01)に高値を示し,以降4時間目および6時間目(p<0.01),10時間目および12時間目で有意(p<0.05)に血糖が高値に維持された.一方,OK-432-GL群ではGL群に比し90%PH後2時間目で血糖は高値に維持され,6時間目では176.1±80.8mg/dlと有意(p<0.01)に高値を示した.RES賦活下における90%PH後の肝DNA合成能の変化をみると,BrdU-Labeling IndexはOK-432-GL群では90%PH後18時間目より上昇し始め,119.8±54.6とGL群の4.4±2.1に比べ27.2倍(p<0.05)であった.90%PH後36時間目の合成ピーク時には311.2±97.4とGL群の177.0±60.9の1.8倍(p<0.05)であった.以上の結果より,90%PHにおける20%glucose投与は術後のhypoglycemiaの予防に有効であった.さらにRESを賦活させる事より,残存肝のDNA合成能が増強され肝再生増強効果を誘導し,その結果,生存率が著明に改善したものと推定できた.

キーワード
90%部分肝切除術 (90%PH), Reticuloendothelial system (RES), OK-432, 肝再生, Bromodeoxyuridine(BrdU)

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