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書誌情報]
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日外会誌. 95(8): 521-527, 1994
原著
肝切除術前後におけるヒト肝細胞増殖因子
(hHGF)の変動に関する検討
I.内容要旨血中hHGF濃度と肝切除前後の病態との関連をretrospectiveに検討した.肝切除症例39例(肝細胞癌17例,肝エキノコッカス症11例,肝血管腫および肝内結石症各4例,転移性肝癌2例, FNH1例)を対象 (H群) として,血中hHGF濃度 (以下hHGF値:単位ng/ml) を術前後に経時的に測定した.対照 (C群) として,肝切除以外の手術症例8例を用いた. hHGF値の測定はELISA法(サンドイッチ・プレート法)によった. H群では術前値 (0.27±0.11) に比較して,術後1日 (0.59±0.24), 3日 (0.47±0.23), 5日 (0.38±0.16), 1週 (0.38±0.14) で有意の上昇 (p<0.01) がみられた.術後3日目ではH群 (0.45±0.22) はC群 (0.30±0.06) に比して有意に高値を示した (p<0.01).術式別にみると, 2区域切除例 (19例) および部分切除例 (8例) ではC群に比し術後3日目で有意に高値を示した.肝硬変合併症例は非合併症例に比し,術前および術後5日目および3週目で有意に高値を示した.慢性肝炎の有無では有意差は認めなかった.肝不全を続発した3例では,術後1日目に0.95±0.42と,非肝不全例 (0.56±0.21) に比し有意に高値を示した (p<0.05).術前hHGF値は,術前の血清アルブミン値と負の相関 (r=-0.4034) を示した.また,術後1日目のhHGF値は,手術時間 (r=0.5445),出血量 (r=0.4418) と正の相関を, 4週目の肝容積増加率 (r=-0.5841) と負の相関を示した. hHGF値は,肝障害とくに肝硬変を合併する症例で高値を示しかつ肝切除後の回復が遅延した. hHGF値と肝予備能との関連が示唆され,その経時的測定は肝切除術による肝細胞機能のダメージの指標として有用であった. hHGF値の高値は,必ずしも良好な機能的肝再生を表すものではなく,高値が遷延する場合には肝不全の発生を予期する必要があると考えられた.
キーワード
ヒト肝細胞増殖因子(hHGF), 肝切除術, 肝予備能, 肝機能障害
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