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日外会誌. 95(8): 496-503, 1994


原著

生体適合性に関する研究
-血液透析膜素材による末梢単核球のサイトカイン産生-

東京医科大学 第2外科学教室(主任:古川欽一教授)

池田 克介

(1993年3月9日受付)

I.内容要旨
炎症性サイトカインであるIL-1,TNF-α,IL-6等は発熱,炎症等に関与する細胞の活性化,急性蛋白の産生に強く関わっていることが知られている.今回,血液透析に使用する透析膜による生体への影響を調べるために,2系統の実験を施行した.最初に,透析膜そのものの単核球に対する影響を『抽出液実験』として,次に透析回路内を循環させた場合のそれを『還流実験』として,サイトカイン産生量を測定し検討した.
抽出液実験では,まず,膜抽出液に微量に含まれるエンドトキシン(LPS)の影響をみるために予備実験を行った.LPS濃度10ng/mlでIL-1,IL-6の産生がみられたが,neopterin産生はみられなかった.また,β2-microglobulin (β2-m) 100~10,000ng/mlでむしろ産生抑制がみられた.次に,膜抽出液20μg/mlでは,IL-1α,TNF-α,IL-6,neopterin,β-mの産生はみられなかった.
全血還流実験ではセルロース (CE) 膜,ポリエチレングリコール結合再生セルロース (AM-PC) 膜でのIL-1α,β,TNF-α,IL-6,neopterin,β-mの産生はみられなかった.しかし,ポリメチルメタクリレート (PMMA) 膜ではIL-6,IL-1α,β,TNF-αの産生が微量にみられた.以上の結果より,CE,PMMA膜の抽出液ではサイトカイン産生は認められないが,全血還流実験ではPMMAは単球系細胞の活性化の可能性が若干あると示唆された.

キーワード
Biocompatibility, fiber membrane, IL-1, IL-6, TNF-α


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