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日外会誌. 95(7): 442-447, 1994


原著

大腿動脈・肝動脈加温バイパスによる新しい肝局所温熱療法の実験的検討

神戸大学 医学部第1外科

西田 十紀人 , 具 英成 , 斎藤 洋一

(1993年3月22日受付)

I.内容要旨
肝局所温熱療法にはradiofrequencyが主に用いられているが,不均ーな深部加温や,皮下脂肪温度の過上昇などが問題であった.そこで著者らは,大腿動脈 (FA)・肝動脈 (HA) 加温バイパスにより肝動脈流入血そのものを選択的に加温する新しい肝局所温熱療法を考案し実験的検討を行った.
雑種犬 (n=8, mean±SD; 11.6±1.9kg) を用い全麻下で,内頸動脈,外頸静脈に各々,動脈圧測定および輸液用カテーテルを留置した.開腹下で胃十二指腸動脈から送血用カテーテルを固有肝動脈に留置した.また大腿動脈から脱血用カテーテルを下行大動脈に留置し,遠心血液ポンプ,輸血用加温コイル2連,送血カテーテルを順に接続して, FA・HA加温バイパスを作成した.温度測定は恒温槽,肝動脈流入部バイパスルート,肝実質および直腸の4カ所で加温開始60分後まで経時的に行った.全身ヘパリン化後153±33 (mean±SD) ml/minの血流量でバイパスを駆動し,循環動態が安定したところで加温コイルを47℃の恒温槽に浸し,30分間の加温を行った.
肝動脈流入血温は加温開始5分後で42.8±0.5℃に達し,その後は緩やかに上昇し30分後で44.0±0.4℃に達した.肝実質温は加温10分, 20分および30分後で各々,40.9±1.8℃, 42.1±1.1℃および42.8±0.8℃と前値36.2±1.8℃に比して有意に上昇した(p<0.01).これに対し,直腸温のピークは加温終了時で39.3±1.2℃に留まった.加温終了後には肝実質温は速やかに直腸温まで下降し,加温終了後30分で両者は各々,38.1±1.4℃, 38.1±1.3℃とほぼ同様の値を示した.
以上より,本法によって選択的な肝実質加温が可能と考えられた.また本法は手技的にも簡便であり,肝局所温熱療法の新しい手法として有用と思われた.

キーワード
肝局所温熱療法, 大腿動脈・肝動脈加温バイパス, 肝動脈流入血加温

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