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日外会誌. 95(7): 435-441, 1994


原著

静脈侵襲よりみた胃癌の血行性転移の特性

東北大学 医学部第1外科

後藤 慎二 , 斉藤 善広 , 椎葉 健一 , 松野 正紀

(1993年4月27日受付)

I.内容要旨
胃癌の血行性転移に及ぼす静脈侵襲の影響を検討するため術中肝転移症例(A群)8例,血行性転移再発症例(B群)26例,非再発症例(C群)36例の合計70例の胃癌組織を全割し, 口径50μm以上の全静脈を検索した.静脈は口径別に50~100, 100~200, 200μm以上の3群に,また存在部位別にm•smv, pmv, ss•sevの3群に分類した.各症例の静脈侵襲率(RVI)は全検索静脈に占める侵襲陽性静脈の比率として各症例別に半定量的に算出した.また深達度ss• s(a1 • a2)の大腸癌症例,術中転移症例4例,転移再発症例3例の合計7例との比較検討も行った.
各群の平均静脈侵襲率(ARVI)はA群が7.6%, B群が2.6%, C群が0.7%と各群間に有意差を認めた.また口径別では200μm以上の大口径静脈,層別ではSS層以深におけるARVIのみがA, B群がC群に比べ有意に高率だが, A群, B群間に有意差を認めず, SS層以深に存在する大口径静脈のRVIが血行性転移に強く関与しているものと思われた.また組織型別に口径別,層別ARVIをみると,いずれも分化型癌が高値を示し,特にpm層以深で有意差を認めた.
また同一深達度の大腸癌症例との比較では胃癌症例は術中転移群と再発群との間に有意差を認めるものの,大腸癌症例では両群間に有意差を認めなかった.また口径別,層別ARVIは再発群でのみロ径200μm以下または, m•sm層において大腸癌症例が有意に高値を示した.しかし胃癌の組織型を分化型癌に限って比較すると両者には特に差を認めず, 胃癌でも未分化型癌の再発機序が大腸癌とはやや異なるものと考えられた.

キーワード
胃癌, 静脈侵襲, 血行性転移

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