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日外会誌. 95(6): 415-418, 1994


症例報告

腹腔鏡下手術に随伴して発症した左下腿 compartment 症候群の1例

慶應義塾大学 医学部外科
*) 慶應義塾大学 整形外科

加瀬 卓 , 大上 正裕 , 折井 正博 , 北島 政樹 , 宇佐見 則夫*) , 井口 傑*)

(1993年2月25日受付)

I.内容要旨
腹腔鏡下手術に随伴して発症した左下腿compartment症候群の1例を経験した.症例は胃早期癌の63歳の男性である.腹腔鏡下胃部分切除術の適応と考え,まず,気腹に伴う下肢深部静脈血栓の防止目的で,弾性包帯にて両下肢を圧迫した.自動縫合器による切除を試みたが縫合部の一部に閉鎖不全を認めたため,開腹し広範囲胃切除術に変更した.下肢圧迫時間は6時間20分であった.手術直後より左下腿の腫脹,疼痛とミオグロビン尿を認め, MRI上も左下腿筋の著明な浮腫像を認めた.下腿の循環障害に起因したcompartment症候群と診断し,筋膜切開術を施行した.術後の経過は良好で,後遺症は認めなかった.本症例は腹腔鏡下手術の際,下肢深部静脈血栓症防止のために行われる下肢の圧迫に随伴して発症したcompartment症候群と考えられ,今後の腹腔鏡下手術を施行する上での注意点を提示する重要な症例であると考えられた.

キーワード
腹腔鏡下手術, compartment 症候群, MRI


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