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日外会誌. 95(5): 343-347, 1994


原著

急性心筋梗塞後心室中隔穿孔に対する手術成績の検討

久留米大学 医学部第2外科

磯村 正 , 小須賀 健一 , 久富 光一 , 平野 顕夫 , 田山 栄基 , 大橋 昌敬 , 大石 喜六

(1992年12月3日受付)

I.内容要旨
1981年8月から1992年8月までに経験した15例の急性心筋梗塞 (AMI) に合併した心室中隔穿孔 (VSP) のうち,手術を施行した12例についての成績を検討した.原則として全例内科的治療を優先させ, AMI発生後2週間以上の経過で手術する方針をとったが,大動脈バルーンパンピングを併用した内科的治療で2週間以上待機できたのは4例のみであった.術前の血行動態と手術時期との関係をみると,肺体血流比 (Qp/Qs) 3.0以上の7例全例とも2週間以上の待機は不可能で, AMIの診断後15時間から11日目での手術が必要であったが, Qp/Qs 3.0未満の5例中4例では2週間以上の待機手術が可能であった.ショック状態で手術を施行後にも右心不全を合併した2例では体外循環からの離脱が不可能で,両心補助が必要と考えられた.手術生存10例では急性期の手術でも止血に難渋する例はなく体外循環からの離脱,術後のIABPからの離脱は可能で循環動態の改善を得た.しかしながら, 3例が術前から遷延する腎不全,呼吸不全のため,人工呼吸器からの離脱が出来ず多臓器不全で死亡した. 6例(最長10年)の遠隔期成績では全例NYHA I~II度へ改善した. VSP発症後Qp/Qsが高値を示すものでは,心不全から多臓器不全へ急速に進行し,術前より遷延する腎不全,呼吸不全のため,術後管理が困難となるため,可及的早期手術が望ましいと考えられ,生存例での遠隔成績は良好であった.

キーワード
心室中隔穿孔, 急性心筋梗塞, 肺体血流比(Qp/Qs), 多臓器不全, 遠隔成績

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