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日外会誌. 95(5): 336-342, 1994


原著

腹腔鏡下胆嚢摘出術中の動脈血炭酸ガス分圧ならびに尿量の気腹による変動

1) 市立札幌病院 外科
2) 北海道大学 医学部第1外科

脇坂 好孝1)2) , 佐野 秀一1) , 小池 能宣1)2) , 中西 昌美1) , 内野 純一2)

(1993年1月5日受付)

I.内容要旨
腹腔鏡下胆嚢摘出術では二酸化炭素ガスによる気腹を長時間にわたって行うが,これによって動脈血ガス分析値や術中尿量が受ける影響を検討した.気腹圧上限として10mmHgと15mmHgの2通りを用いこれらの間で気腹前後での値を比較した.結果は,高い気腹圧15mmHgの方が低い10mmHgよりも気腹によるPaCO2値上昇度やpH低下度は有意に大きかった.また,気腹圧15mmHgでは手術時間60分以上の群では60分未満の群に比べてPaCO2値の上昇度が有意に高かったが,10mmHgでは有意差は存在しなかった.肥満度ではBroca係数120以上ではPaCO2値が有意な上昇となったのに対して, 120未満ではその上昇に有意差はみられなかった.さらに術中尿量は,気腹圧の高いものほど,また手術時間の長いものほど大きく低下する傾向がみられたが肥満度による有意な影響は認められなかった.心肺障害合併群では非合併群に比べて一般に動脈血ガス分析値が正常より大きく変動した.
以上の結果から腹腔鏡下胆嚢摘出術で用いる気腹圧の大きさは可能な限り低い方がより生理的な状態を維持することができること, これに加えて手術時間や患者肥満度なども大きな影響を与えることが明らかになった.また,心肺障害合併群では有意に大きなPaCO2値上昇があったのに対して非合併例では有意差は存在しなかった.こういったハイリスク患者では術前に入念な検査を行い,低い気腹圧で短時間に手術を行うと同時に肥満度などの患者の身体的条件についても充分な配慮が必要であると思われる.

キーワード
腹腔鏡下胆襄摘出術, 気腹, 肥満度, 動脈血ガス分圧値, 尿量


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