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日外会誌. 95(4): 263-270, 1994


原著

ヌードマウス可移植性ヒト乳癌株に対する化学・内分泌療法に関する実験的研究
-Tamoxifen と5-FU の併用効果について-

東京女子医科大学付属第2病院 外科

渡辺 修

(1992年11月18日受付)

I.内容要旨
乳癌に対する内分泌化学療法としてtamoxifen (TAM) と5-fluorouracil (5-FU) を用い,これらの併用による抗腫瘍効果の作用機作についてestrogen receptor (ER) およびDNAを解析することにより検討した.雌ヌードマウスの背部皮下にヒト乳癌細胞株R-27を移植し,対照群, TAMを5mg/kgで3日毎に計6回筋注したTAM群, 5-FUを60mg/kgで4日毎に計3回腹腔内投与した5-FU群,両者を併用した併用群の4群に群分けして実験を行った.治療開始後21日目で腫瘍を摘出し, dextrancoated charcoal法によりERを測定した.また,フローサイトメトリーによりS期の割合 (%S) を求めるとともに, proliferative cell nuclear antigen (PCNA) の免疫組織化学的染色による陽性細胞数の割合を算出し, TAMと5-FUの併用効果の作用機作がDNA合成阻害によるものか否かを検討した.各治療群とも対照群に比べ腫瘍の増殖を抑制したが,併用群では, TAMと5-FUの相乗効果が認められた. ER値では,対照群に比べ, TAM群, 5-FU群ともに低値となったが,併用群では, ERの低下がより著明となった.%SおよびPCNA陽性細胞数の割合では,対照群と比較して各治療群で減少していたが,治療群間では差はみられなかった. DNA合成期の細胞数の割合が各治療群間で差がなかったことやDNAの複製,特にleading鎖合成に必要なPCNAの陽性率も各治療群間で差がなかったことから, TAMと5-FUの併用効果は, DNA合成阻害によるものではないことが示唆された.

キーワード
乳癌, ヌードマウス, 内分泌療法, 化学療法


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