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日外会誌. 95(4): 217-223, 1994


原著

消化器外科領域における深在性真菌症の発生・診断および治療についての多施設共同研究

1) 大阪大学 医学部第2外科
2) 大阪府立成人病センター 外科

辻󠄀仲 利政1) , 上林 純一1) , 今岡 真義2) , 岩永 剛2) , 森 武貞1)

(1992年12月24日受付)

I.内容要旨
消化器外科領域における深在性真菌症の発生・診断および治療についての多施設共同研究を行った.診断基準に基づき45症例が登録され,うち36例が診断と治療が完遂された完全例であった.登録時診断はTPN感染12例,腹腔ドレーン感染7例,真菌血症5例,尿路真菌症7例,肺真菌症1例,不明熱4例であり,その死亡率は17%(6例)であった.ミコナゾール(MCZ)投与による治療効果は,臨床的有効率82%,真菌学的効果72%,有用率71%であり,副作用の出現を20%に認めた.眼底検査にて眼内炎の所見が12/29例(41%)に出現し,治療経過を追跡し得た10例中8例に改善効果を認めた.血清学的補助診断法としβ-グルカン値をトキシノメーター法(T法)と生化学工業社法(S法)を用い,カンジダ抗原をカンドテック(C法)を用いて測定した.T法は25/40例(63%),S法21/24例(88%),C法11/21(52%)で陽性であった.血液培養陽性例および真菌検出例における陽性率は,それぞれT法(83,62%),S法(100,92%),C法(83,50%)であった.真菌検出状況から再分類した時のT法および眼内炎の陽性率と死亡率は,それぞれ真菌血症(86,60,38%),尿路真菌症(63,43,23%),TPN感染(64,80,7%)ドレーン感染(33,17,33%)であった.さらに血液培養陽性を除いた眼内炎の陽性率と死亡率は尿路真菌症で(20,11%),TPN感染で(72,0%),ドレーン感染で(20,14%)であった.TPN感染時に眼内炎が高頻度に合併した.以上の結果より,消化器外科領域患者は真菌症の危険因子を有すると考えられた.またその早期診断にβ-グルカンと眼底検査が有用であった.疑診例も含めた真菌症例に対するMCZによる治療の妥当性が確認された.

キーワード
深在性真菌症, 消化器外科, 診断と治療, 血清補助診断法, 眼内炎

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