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日外会誌. 95(3): 179-186, 1994


原著

犬同所性肝移植における血中 β-N-Acetyl Hexosaminidase(β-NAH)測定の意義

神戸大学 医学部第1外科(主任:斉藤洋一教授)

富永 正寛 , 具 英成 , 黒田 嘉和

(1992年10月9日受付)

I.内容要旨
Kupffer細胞が特異的に処理するライソゾーム酵素である血中β-N-acetyl hexosaminidase(β-NAH)を測定し,肝移植後早期の肝網内系機能の変化を検討した.犬同所性肝移植を行い,I群:1時間冷保存予後良好群(n=6),II群:1時間冷保存予後不良群(n=6),III群:20時間冷保存群(n=5)の3群に分け,血中β-NAH(nmol/ml/hr),総胆汁酸(TBA,μmol/L)およびGOT(IU/l)を経時的に比較検討した.β-NAHの頂値は,I群では血流再開後4時間で611±125,II群では6時間で1,227±310,III群では4時間で3,952±685となり,I群ではII,III群に比べ速やかに減少した.I・II群間は4時間後より,I・III群間は15分後より明らかな差を認めた(p<0.01).TBAはI,II群とも血流再開直前に37.9±7.8および42.5±8.4の頂値を示したが,III群では再開後4時間58.9±17.6まで上昇した.I・II群間は4時間後より,I・III群間では15分後より明らかな差を認めた(p<0.01).GOTはI,II群では24時間後に各々929±350および1,581±396の頂値をとったが,III群では1および24時間後に1,189±259および1,945±394の2峰性の経移を示した.I・II群間は,24時間後のみ,I・III群間は15分後より明らかな差を認めた(p<0.01).以上より血中β-NAHは,TBAと同様に移植肝機能をより早期に評価する上で有用な指標と考えられた.またβ-NAHは,GOTやTBAにみる肝細胞機能とは異なる動態を示し,これは肝虚血および再灌流に伴う細胞障害に起因する逸脱とKupffer細胞を主とする肝網内系機能の回復に伴う取り込みの両面を反映するためと考えられた.

キーワード
同所性肝移植, β-N-acetyl hexosaminidase, 肝網内系機能

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