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日外会誌. 95(3): 171-178, 1994


原著

胃癌におけるEpidermal Growth Factor とその受容体の発現と DNA ploidy pattern 及び Nucleolar Organizer Regions との関連性

1) 福井医科大学 第1外科
2) 福井医科大学 第1生化

荒井 理夫1) , 広瀬 和郎1) , 中川原 儀三1) , 犬塚 学2)

(1992年10月26日受付)

I.内容要旨
胃癌切除症例68例における上皮増殖因子 (humanepidermal growth factor, 以下EGF) とそのレセプター (EGF receptor, 以下EGFR) の発現をABC酵素抗体法を用い免疫組織学的に検索し, これらと核DNA量及び核蛋白合成能との関連性を検討するために,細胞核 DNA ploidy pattern (顕微蛍光測光法) とnucleolar organiser regions (以下NORs,硝酸銀染色法) を検索した.その結果,EGF, EGFRの発現は,早期癌28例では各々2例 (7%), 1例 (4%) にのみ認められたが,進行癌40例では, 25例 (63%), 9例 (23%) と有意に増加した (p<0.01).また,進行癌では早期癌に比べ,DNA aneuploidy (異倍体) の頻度, NORsの個数の増加がみられた. EGF, EGFRの発現は,aneuploidを示す37例では,それぞれ19例 (51%), 9例 (23%) に認められ, diploid (二倍体) を示す31例 (EGF陽性8例,26%;EGFR陽性1例,3 %) に比べ,有意に高く (p<0.05),すなわちEGF, EGFRの発現は,核DNA量の増加と関連していた.さらに, EGF陽性例では,癌細胞1個あたりのNORsの個数が4.11±0.72であり, EGF陰性例 (2.68±0.61) に比べ有意に高く,核蛋白合成が亢進していた.
以上の結果より,胃癌におけるEGF,EGFRの発現は,早期癌から進行癌へ進展していく過程で増強し,核DNA量の増加と核蛋白合成の増加を促し,胃癌の増殖能を高めることが示唆された.

キーワード
EGF, EGFR, DNA ploidy pattern, NORs, v-erbB 遺伝子

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