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日外会誌. 95(2): 116-122, 1994


原著

下肢急性動脈閉塞症-特に原因によるMNMS発生の違い

宮崎医科大学 第2外科

中村 都英 , 鬼塚 敏男 , 桑原 正知 , 山本 淳 , 松崎 泰憲 , 関屋 亮 , 柴田 紘一郎 , 古賀 保範

(1992年10月5日受付)

I.内容要旨
下肢急性動脈閉塞症40例を対象に,急性動脈閉塞の原因とMNMSの発生との関連性について検討した.原因による分類を塞栓症,閉塞性動脈硬化症 (ASO) に合併した血栓症(以下血栓症),その他とし症例数はそれぞれ12, 11, 17例であった.血流再開率は塞栓症100%,血栓症55%,その他88%,全体で83%で,血栓症において不良であった.肢切断は血栓症に2例,その他に1例計3例 (8%) であり,死亡は5例 (13%) で, MNMSにて2例が死亡した. MNMSの発生率は塞栓症1例,血栓症2例,その他5例計8例 (20%) であった.
来院時のBalas分類は塞栓症およびその他ではIおよびIIがほとんどを占め,重篤な虚血 (Balas分類III, IV) は血栓症に多かった. MNMSはBalas分類IIでも3例に発生したが,死亡にいたったのはIIIとIVに発生した症例であった.治療開始までの時間は, MNMSは6時問から12時間の間に5例と集中し,これらはすべて塞栓症とその他であった. 24時間から72時間の間には2例発生し,すべて血栓症であり, MNMS発生までの虚血時間において原因による明らかな差が認められた.血流再開がえられた症例の阻血時間をMNMSの発生の有無で比較すると,血栓症ではMNMS発生例では平均52.0±12.0時間,非発生例では平均15.5±11.1時間で有意にMNMS発生例に長かった (p<0. 05). 一方,塞栓症やその他の群では発生例と非発生例との間に差は認めなかった.すなわち急性動脈閉塞症の治療においてその原因を正確に判断することが重要であり, ASOに合併した急性動脈閉塞症では, Golden hourとされる6から8時間を越えていても,臨床所見,虚血範囲など総合的に判断した上で血行再建が可能であるが, Balas分類III以上ではMNMS発生の可能性が高くなる.側副血行路の発達が不良と考えられる塞栓症や医原性および外傷によるものでは, 6時間を越えた場合はMNMS発生の可能性に十分の配慮をすべきである.

キーワード
急性下肢動脈閉塞症, Myonephropathic-metabolic syndrome, 塞栓症, 閉塞性動脈硬化症


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