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日外会誌. 95(2): 83-93, 1994


原著

温阻血障害肝に対するprostaglandin I2誘導体OP-41483-α-CD 投与の肝機能改善効果に関する実験的研究

弘前大学 医学部第1外科学教室(指導:鯉江久昭教授)

澤田 光広

(1992年6月8日受付)

I.内容要旨
Prostaglandin I2誘導体OP-41483-α-CD (aPGI2) 投与が,primary non function (PNF) の起因となる高度阻血障害移植肝に有効か否かを実験的に検討した.温阻血時間, aPGI2投与の有無により,I群 (60分温阻血,aPGI2非投与), II群 (90分温阻血,aPGI2非投与), III群 (90分温阻血,aPGI2投与)の3群の温阻血障害肝モデルを用い,以下の結果を得た.①肝組織血流量 (HTF) は血流再開直後より急激に上昇し,血流再開15~30分後にほぼプラトーに達するが,血流再開15分後において, I, III群で各々23.6, 21.5ml/min/100gと良好に回復した.しかし, II群では14.2ml/min/100gと不良で有意に低値を示し,血流再開180分後まで低値を維持した.②動脈血中ケトン体比 (AKBR) は, I, III群では血流再開後より良好に回復し,血流再開15分後,各々1.19, 1.25であったが, II群で0.71と,I, III群に比し有意に低値を示した.③肝組識総ヌクレオチド量 (TAN) は温阻血中急激に減少し,血流開始後より回復し始め, I, III群において血流再開15分後で各々16.30, 14.86μmol/g.d.w.と回復傾向を認めているのに対し,II群では9.64μmol/g.d.w.と回復は不良であった.肝組織ATP量の変動も,ほぼTANの変動と同様であった.④肝静脈血中フリーラジカル (HV-FR) は, ESRによるラジカル強度で比較すると, II群では血流再開後より急激に上昇し,血流再開15分後に7.65S.H./mgと,I群 (3.95S.H./mg), III群 (3.62S.H./mg) に比し有意に高値を示した.しかし,III群では血流再開後はほとんど上昇を認めず, I, II群と比較して有意に低値を示した.
本実験結果より, aPGI2は阻血障害を受けた移植肝に極めて有効な治療法となると思われた.

キーワード
肝温阻血障害, Prostaglandin I2誘導体OP-41483-α-CD (aPGI2), 肝組織 adenine nucleotide, Primary graft nonfunction (PNF), free radical


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