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日外会誌. 95(2): 66-70, 1994


原著

直腸癌におけるNCAMの発現と神経浸潤および転移形成について
-抗NCAM(neural cell adhesion molecule:神経接着分子)抗体による検索-

岡山大学 医学部第1外科

剱持 雅一 , 合地 明 , 丸尾 幸喜 , 村嶋 信尚 , 平本 孔彦 , 岩垣 博巳 , 折田 薫三

(1992年11月17日受付)

I.内容要旨
癌細胞の神経浸潤は静脈侵襲, リンパ管侵襲とは異なった特異な浸潤様式と考えられている.神経浸潤は,癌細胞が神経周膜の内側を連続的に進展するため外科的処置において残存する可能性が高く,癌再発との関連性が示唆されている.今回,我々は,直腸癌細胞の神経親和性を検索するとともに再発形式との関連についても検討したので報告する.岡山大学第1外科で最近7年間に経験した直腸癌64例を対象とした.直腸癌64例の原発巣の組織凍結標本2例,パラフィンブロック64例をHE染色,及び抗NCAM抗体を用いた免疫組織染色を施行した.直腸癌の神経浸潤の判定は神経周膜内に癌細胞を認めるもののみを陽性とした.その結果,直腸癌64例の内,神経浸潤を認めたものは17例で27%の腸性率であった.直腸癌の神経浸潤と各因子との関係を見ると, stageと神経浸潤との間には相関は認めなかった.同様に部位との間にも相関は認めず,癌の深達度からみるとpmに1例の神経浸潤を認めるが,大部分はa1以上の深達度のものに認められ,深達度が深くなるにつれてその陽性率は増加した.また, ly, v との間にも相関は認められなかった.また神経浸潤陽性17例中14例にNCAMの発現を認め,有意の相関を認めた.直腸癌細胞でのNCAMの発現様式は細胞膜表面に染まるFocal typeと細胞質にび漫性に染まるDiffuse typeに分けられた.局所再発では9例中8例が神経浸潤陽性か,あるいはNCAM陽性であり, lyとの関連は認められなかった.肝転移例では, v との相関は認められず,神経浸潤陰性か, NCAM陰性例が多い領向が認められた.
以上より, NCAM陽性例では神経浸潤からの局所再発が, NCAM陰性例では肝転移との関係が示唆された.

キーワード
直腸癌, 神経浸潤, 神経接着分子, 局所再発, 肝転移

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