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日外会誌. 95(1): 34-39, 1994


原著

超音波断層法を用いた一次性下肢静脈瘤における不全穿通枝の診断

鳥取大学 医学部第2外科

応儀 成二 , 金岡 保 , 森 透

(1992年9月14日受付)

I.内容要旨
高分解能超音波断層法で一次性静脈瘤における不全穿通枝の形態的特徴を研究し,その診断における高分解能超音波断層法の診断精度を検討する.
対象は, 28症例42下肢で,筋鬱血症状16肢,皮膚鬱血症状26肢とした. 7.5MHzのトランスデューサーで表在静脈が筋膜を穿通する部位を確認して,穿通枝と診断した.その部位の静脈径を計測し,筋膜下で流入する深部静脈を確認した.手術で対象静脈が筋膜を穿通する部位を確認し,また下腿筋を圧迫して深部静脈からの逆流を判定し (bleed back test),超音波断層法のgold standardとした.術前診断した穿通枝は89個であった.筋膜下流入静脈により穿通枝を8型に分類した.頻度は, 2型38% (後脛骨静脈), 5型28% (内側腓腹筋静脈), 3型16% (腓骨静脈)の順に多く, 1下肢あたり1.9個の穿通枝が存在した.術中評価した34穿通枝の弁不全は53%あり,径3mm以上から生じ,径7mm以上で100%となった. 2型, 5型, 3型穿通枝で弁不全の発生率に有意差はなかったが, 8mm以上の拡張は5型に限定して発生した.術中穿通部位を確認した52穿通枝のうち4穿通枝が確認できず,超音波断層法による部位診断の正診率は92%であった.穿通枝径4mm以上を弁不全の指標にした場合,超音波断層法の弁不全に関する診断精度は, sensitivity 88%, sepcificity 38%, total accuracy 65%となった.
高分解能超音波断層法は一次性静脈瘤でみられる不全穿通枝の形態的変化の観察に有用な無侵襲的検査法であった.この方法による不全穿通枝の診断精度は,部位診断では十分臨床応用可能な高い信頼度であったが,弁不全診断では診断精度が十分ではなかった.従って,高分解能超音波断層法は術前の不全穿通枝の部位診断法として利用できる.

キーワード
一次性下肢静脈瘤, 超音波断層法, 穿通枝径計測, 不全穿通枝, 穿通枝分類

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