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日外会誌. 95(1): 14-20, 1994


原著

甲状腺組織片の凍結保存
-至適凍結条件とrecovery-

日本医科大学 第2外科

北村 裕 , 清水 一雄 , 長浜 充二 , 庄司 佑

(1992年10月6日受付)

I.内容要旨
教室では手術時に切除した甲状腺組織片を自家移植の目的で凍結保存してきたが,甲状腺組織片の凍結保存に関する報告はわずかで,凍結方法について検討されたものは見いだせなかった.そこで種々の条件下で凍結保存された甲状腺組織片をコラゲナーゼで分散し,培養後の生存細胞数を比較して至適凍結条件を求めた.またrecoveryを新鮮組織の細胞数に対する凍結保存組織片の生存細胞数の割合で求め,凍結保存組織片の細胞生存率として評価した.検討した凍結条件は,冷却速度,凍結媒液のdimethylsulfoxide (DMSO) 濃度およびfetal bovine serum (FBS) 濃度,組織片サイズおよび凍結前静置の有無であった.結果より求めた甲状腺組織片の至適凍結条件は,凍結媒液にcryoprotectantとして10%DMSOと10%FBSを加えた培養液を用い,また組織片は1mm角サイズを用いて, 4℃で1時間静置後に,ー80℃まで緩速冷却して凍結後,液体窒素内に保存することであった.至適条件下の生存細胞数は1.24~2.03(1.71±0.40) × 106/0.1g組織, recoveryは25.2~58.0 (45.5±14.6)%であった.凍結保存甲状腺組織片は比較的高い細胞生存率を示したことから,濾胞構造を維持した移植片としての臨床応用の可能性も示唆された.

キーワード
甲状腺組織, 凍結保存, 自家移植

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