[書誌情報] [全文PDF] (1072KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 94(12): 1309-1312, 1993


症例報告

結核性膿胸に対する大網充填被覆術後6日目に胃穿孔を来たした1治験例

国立療養所兵庫中央病院 呼吸器外科
*) 国立療養所兵庫中央病院 外科
**) 公立豊岡病院 
***) 神戸大学 医学部第1病理

山本 英博 , 大迫 努 , 康 徳光 , 山本 元*) , 森元 保**) , 埴岡 啓介***) , 伊東 宏***)

(1992年9月24日受付)

I.内容要旨
72歳男性の結核性膿胸に対し開窓術を行った. 2カ月後に大網充填術を追加したが術後6日目に急性腹症に陥り緊急開腹術を必要とした.術中所見は胃前庭部から体部に及ぶ大彎側の8.5×3cmの巨大な胃潰瘍と穿孔を認めた.手術は広範囲胃切除を行い,術後管理に難渋したが救命し得た.組織学的には虚血性潰瘍の所見で,有茎大網作成後の右胃大網動脈の支配領域の胃壁の循環不全が原因と考えられた.膿胸に対する大網充填術の合併症には胃内容排泄機能の低下などが指摘されていたが,術後早期の虚血性胃潰瘍の穿孔の報告例は見当たらなかった.本症例の如く有形大網弁の作製に際しては胃壁の血行障害が生じる可能性があり,有茎大網弁の血流のみならず,胃壁の血流に対しても注意が必要であろう.

キーワード
膿胸, 大網充塡術, 胃穿孔


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。