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日外会誌. 94(12): 1299-1304, 1993


原著

肺高血圧症合併先天性心疾患における過酸化脂質及びフリーラジカルスカベンジャーの影響

刈谷総合病院 
*) 名古屋市立大学 医学部第1外科

浅野 實樹 , 三島 晃 , 竹内 寧 , 宇佐見 詞津夫 , 小谷 彦蔵 , 鈴木 克昌*) , 由良 二郎*)

(1992年9月7日受付)

I.内容要旨
重症な肺高血圧合併先天性心疾患例では外因除去(短絡の閉鎖)後も肺動脈圧が正常化し難く術後管理に難渋する例が多い.このような状況下における過酸化脂質(LPO)の関与の有無を検討し,さらにスカベンジャーの有用性についても考察を加えた.
小児開心術14例で肺高血圧(PH)群7例と肺動脈狭窄による低肺血流(PS)群7例の2群において,肺組織及び血漿LPO, 内因性スカベンジャーであるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD),還元型グルタチオン(GSH)を術前,術中及び術後に測定した.
PH群及びPS群の術前値はそれぞれ, Pp/Ps0.94±0.09, 0.22±0.08, Qp/Qs 2.08±0.76, 0.39±0.19, 肺動脈拡張期圧PAd (mmHg) 49±15, 8±5, 及び肺血管抵抗値PVR(dyns. sec. cm-5)197±35, 16±15であり,いずれもPH群が有意に高値であった.術後挿管日数はそれぞれ3.8±1.7,2.5±2.6とPH群に長く,術後Pp/Ps, PVRはPH群においては術前後に比し有意に低下するがPS群よりなお高値(p<0.01)を示した.肺組織LPO(nmol/mg.protein)はPH群2.7±0.9, PS群1.3±0.4と前者が有意に高かった.肺組織SOD(nmol/mg.p), GSH(mU/ng. p)はPH群でそれぞれ1.2±0.2, 36.6±11.4, PS群でそれぞれ1.5±0.3, 55.0±16.9とPH群に活性が低い傾向が認められた.血漿LPO(nmol/ml)は体外循環開始時よりPH群で高値が認められ,術後3日でもPH群1.7±0.2, PS群0.9±0.3と有意差(p<0.01) を認めた.また血漿SODはPH群に低い傾向が認められた.
以上より肺高血圧を伴う先天性心疾患例においてLPOは術前,術後のPVOの成因,持続及び程度に関与しており,フリーラジカルスカベンジャーの投与及び内因性スカベンジャー活性の刺激効果に期待が持たれる.

キーワード
肺高血圧合併先天性心疾患, 過酸化脂質, フリーラジカル, SOD, 血管内皮細胞

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